塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 にんまりと笑いながらそうつぶやいたレナルドは、ラシェルに顔を近づけてきた。重ねられた唇の間からは、指の代わりに今度は舌が滑り込んでくる。お互いの舌の上で薔薇の花びらは更に小さくなっていき、その度に甘い香りが濃くなる。

「うん、甘い。でもラシェルの方がもっと甘くて美味しい」

 微かに唇を離した状態でそんなことを囁いて、再び深く口づけられた。口の中にはもう砂糖漬けは残っていないのに、交わすキスは薔薇の味がする。何度も舌を絡められてラシェルの息が上がっていくが、レナルドは解放してくれる気はなさそうだ。

「ラシェル、可愛い。全部食べてしまいたくなる」

 少し掠れた声でそんなことを囁きながら、レナルドは本当にラシェルを食べてしまうのではないかと思うほどに深く口づける。攻め立てる舌に必死で応えていると、いつの間にかラシェルの身体はベンチの上に押し倒されていた。

 髪を撫で、耳元をくすぐった手が首筋を滑って下に移動していく。ドレスの上から手のひらで包み込むように胸に触れられて、ラシェルは思わずぴくりと肩を震わせた。外でこれ以上の触れあいをするのは恥ずかしくて、ラシェルは慌ててレナルドの手を止めた。

「だめ……です」

「俺に触れられるのは、嫌?」

「嫌じゃないですけど、外は……恥ずかしい、から」

「誰も近づかないように言ってあるから大丈夫だ」

「そういう問題じゃないですっ」

「外は恥ずかしいと言うなら、部屋の中でならいいってことだな?」

「それは……」

「恥ずかしがるラシェルを見てると意地悪したくなるけど、嫌われたら困るからな。この続きは部屋でゆっくりと」

「……っ」
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