塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 令嬢たちの姿が見えなくなったところで、レナルドが疲れたようなため息をついた。

「まさか家にまで押しかけてくるとは思わなかったな。きみにも、嫌な思いをさせてしまってすまない」 

「気にしておりません。レナルド様がとても人気があることは知っていますから」

 そう返すと、レナルドはどこか不満そうな顔になった。

「少しは嫉妬してほしいと思ってしまうのは、俺の我儘かな」

「嫉妬……ですか」

「いや、いいんだ。彼女たちも、俺をなんとか派閥に引き入れたいと訪ねてきたんだから。政治的思惑に嫉妬してくれというのも違うよな」

 そう言って、レナルドは気を取り直したように笑い、ラシェルの額にそっと触れるだけのキスをくれた。 

「恐らく、彼女たちによって俺たちの仲は社交界中に知れ渡る。わざわざ夜会に出るよりも、ずっと効果的だろうな。きっと、ラシェルに近づく男もいなくなるに違いない。その意味では、見舞いに来てくれたことは感謝すべきかもしれない」

 満足げにうなずくと、レナルドは更に強くラシェルを抱き寄せた。
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