塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 彼が何を言っているのかは、ラシェルにだって分かる。黙ってうなずいて目を閉じれば、しばらくして柔らかく唇が重ねられた。

 しばらく触れるだけのキスをくり返したあと、まるで許可を求めるようにラシェルの唇が舌先でなぞられた。それに応えてかすかに唇を開けば、その隙間から舌が滑り込んできた。

「……っ」

 何度キスを交わしても、漏れる声は恥ずかしい。懸命に堪えようとするものの、息継ぎのタイミングでどうしても声が出てしまう。

「ラシェル、可愛い声をもっと聞かせて」

「むり、……っあ」

「可愛い。大好きだよ、ラシェル」

 ラシェルはどんどん呼吸を荒げていくばかりなのに、レナルドは余裕そうに見える。だが、ラシェルの名を呼ぶ声は少し掠れていて、それがたまらなく色っぽい。気づけばラシェルは、胸元に縋りつくようにしながら、彼のシャツをしっかりと握りしめていた。

 結局お茶を飲むどころではなくなってしまったが、お互いの唇をむさぼるように、二人は何度も口づけをくり返した。



 夜、寝支度を整えて寝室に行けば、すでにベッドに腰かけていたレナルドが嬉しそうにラシェルを出迎えてくれた。

「その寝衣も可愛い」

「ほ、褒めすぎです。特に変わったところのない寝衣ですよ」

「でも普段のドレスよりも薄手だし、そんな姿を見られるのは夫である俺の特権だろう」

 少し照れたような様子で、レナルドはラシェルの胸元にちらりと視線を向けた。確かに寝衣は身体の線が出やすいし、着心地を重視しているから胸元も広めに開いている。

――もっとすごい下着を着ていたことが一度だけあるけど、レナルド様は覚えていないものね……。

 初夜に着た下着のことを思い出しつつ、ラシェルは何も言わずに微笑んだ。
< 77 / 167 >

この作品をシェア

pagetop