塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 ベッドに横になると、すぐにレナルドが抱き寄せてくれる。彼の腕に包まれたまま眠るのは、あたたかくてとても幸せだ。

「キスしてもいい?」

「はい」

 眠る前に甘いキスを交わすことも、三日目ともなれば少し慣れてきたように思う。

 しっかりと抱きしめられたまま口づけをくり返し、少し息の上がってきたラシェルの顔をレナルドがじっと見つめる。

「ラシェル、今夜は……」

 レナルドは語尾を濁したものの、彼が何を言いたいのかは分かる。思わず小さく息をのんだラシェルを見て、彼は眉尻を下げた笑みを浮かべた。

「もう、我慢できない。きみを抱きたい」

「レナルド様……」

「ただ抱きしめて眠るだけじゃ、もう無理だ。きみをもっと愛したい」

「で、でも……あの、レナルド様の体調が」

「鍛錬をしても問題ないといわれているくらいなんだから、平気だ」

 ラシェルの顔をのぞき込んだレナルドは、こつんと額をぶつけてきた。

「きみが嫌だというなら、しない。でも、俺の体調を気遣ってくれているだけなら、心配しないで」

「嫌じゃない……ですけど、えっと」

 何を言えばいいのか分からなくて、ラシェルは視線を泳がせた。甘いキスのおかげで熱くなった身体は、これ以上の触れあいを求めている。だけど、行為をすることには躊躇いがある。一線を越えてしまったら、もう離れられなくなってしまう。

 それに、ラシェルは初夜のあの時しか経験がないのだ。痛みしか覚えていないあの行為を、『仲睦まじい妻』として、幸せそうに受け入れられるだろうか。
< 78 / 167 >

この作品をシェア

pagetop