塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 形だけの妻だと言われていた時から、ラシェルの心の中にはレナルドしかいなかったが、今ではもうあふれ出しそうなくらいに彼への想いでいっぱいだ。

 ラシェルはゆっくりとレナルドの背中に手を回して抱きついた。お互いの熱が溶けあって、ひとつになってしまえばいいのにと思う。

「私には……レナルド様だけ」

 彼の耳元で心からの想いを告げると、彼の満足げな吐息が聞こえた。そして肌に唇を落とされ、また新たに痕を刻まれる。

「うん。ラシェルは俺のものだ。ずっと……愛してる。俺の、大切な奥さん」

 告げられた言葉に笑顔でうなずくが、頭のどこかで「これは嘘だ」と囁く声がする。

 これ以上余計なことは考えたくないと、ラシェルは更に強く抱きつく。そして、与えられる快楽に溺れてしまうことにした。

 ◇

 シーツの上に崩れ落ちたラシェルの身体を、レナルドが抱き寄せる。しっかりと腕の中に包まれながら、必死に呼吸を整えていると、レナルドが顔をのぞき込んできた。

「前の俺よりも、きみを気持ちよくさせられていたらいいんだけど」

「そんな、比べなくても……」

「言っただろう、俺は過去の自分に嫉妬してるって。だから、今の俺ができる全てでラシェルを愛したいんだ」

 そう言って、レナルドはラシェルにキスを落とした。触れるだけだったキスは、すぐに深いものへと変わっていく。 

 優しい抱擁も口づけも、初夜にはなかったものだ。あふれるほどの愛の言葉どころか、会話すらあの夜はほとんどなかった。

 だけど、それを知っているのはラシェルだけ。

 何度も与えられる甘いキスを受け止めながら、ラシェルはレナルドに愛される幸せに浸っていた。

< 82 / 167 >

この作品をシェア

pagetop