塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
この状況では、たとえ逃げたところで追いつかれてしまうだろう。エマは足が悪くて杖がないとうまく歩けないし、幼いジャンの足ではすぐに追いつかれてしまう。ラシェルは震える手でエマの杖を拾い上げると、魔獣に突きつけた。
「あっちに行って……。こっち、来ないで」
言ったところで、通じる相手ではない。魔獣は唸りながら姿勢を低くする。いつ飛びかかってくるか分からなくて恐ろしいが、ラシェルは必死に杖を向け続けた。
「ラシェルさま、あたしたちのことはいいから、逃げて」
「何を言ってるの、そんなことできないわ。大丈夫よ、きっと誰かが院長先生に伝えてくれているはずだし、騎士団に救援要請をしてくれているわ」
姉弟を怖がらせてはならないと強い口調で言うが、騎士の到着まで持ちこたえられるか分からない。それでも、この子たちを見捨てて自分だけ逃げるということは考えられなかった。
魔獣はじりじりとラシェルたちとの距離を詰めてくる。杖を振り回せば少し離れるものの、またすぐに近づいてくるのだ。
何度か繰り返しているうちに、魔獣も獲物が手に入らないことに焦れたのだろう。一頭が、大きな声で唸る。それを合図に、周囲の魔獣が一斉に飛びかかってきた。
「きゃあぁぁっ」
無我夢中で杖を振り回すが、魔獣に当たった衝撃で、杖が手から離れてしまう。
もうだめだと諦めて、ラシェルは二人を守るように抱きしめると強く目を閉じた。
だが覚悟していた痛みは一向に訪れず、代わりに魔獣の悲鳴が聞こえた。
「……?」
恐る恐る目を開けると、さっきまでラシェルたちに牙を剥いていた魔獣が全て血を流して倒れ、動かなくなっている。
「あっちに行って……。こっち、来ないで」
言ったところで、通じる相手ではない。魔獣は唸りながら姿勢を低くする。いつ飛びかかってくるか分からなくて恐ろしいが、ラシェルは必死に杖を向け続けた。
「ラシェルさま、あたしたちのことはいいから、逃げて」
「何を言ってるの、そんなことできないわ。大丈夫よ、きっと誰かが院長先生に伝えてくれているはずだし、騎士団に救援要請をしてくれているわ」
姉弟を怖がらせてはならないと強い口調で言うが、騎士の到着まで持ちこたえられるか分からない。それでも、この子たちを見捨てて自分だけ逃げるということは考えられなかった。
魔獣はじりじりとラシェルたちとの距離を詰めてくる。杖を振り回せば少し離れるものの、またすぐに近づいてくるのだ。
何度か繰り返しているうちに、魔獣も獲物が手に入らないことに焦れたのだろう。一頭が、大きな声で唸る。それを合図に、周囲の魔獣が一斉に飛びかかってきた。
「きゃあぁぁっ」
無我夢中で杖を振り回すが、魔獣に当たった衝撃で、杖が手から離れてしまう。
もうだめだと諦めて、ラシェルは二人を守るように抱きしめると強く目を閉じた。
だが覚悟していた痛みは一向に訪れず、代わりに魔獣の悲鳴が聞こえた。
「……?」
恐る恐る目を開けると、さっきまでラシェルたちに牙を剥いていた魔獣が全て血を流して倒れ、動かなくなっている。