蝶よ花よ、あこがれに恋して
《ここで待ってます》
試合が終わり、ミーティングと着替えを待っていた。桜庭さんにメッセージを送り、風景の一部を写真におさめると場所も添付した。桜庭さんからの返事は《分かった》だった。
「心鈴ちゃん」
しばらくすると、桜庭さんは現れた。
「桜庭さん!おかえりなさい」
「はは、うん。ただいま」
恋人の、はにかむような笑顔が眩しいです。
けれど、桜庭さんのその肩にはいつものショルダーバッグが下げられていなかった。私の不安を悟ったのか、桜庭さんはこう説明した。
「急なんだけど、今夜、今日の祝勝会も兼ねて移籍したメンバーの歓迎会するって。心鈴ちゃんも一緒に連れて来いって言われてるんだけど、どうかな」
「…………え」
今夜、というワードに戸惑い「あ、えっと……私は……」とか細い声しか出ずに、視線をうろうろと彷徨わせた。
家には作る予定の料理が待っている。それに、桜庭さんのクラブチームの人と上手にお話出来る自信が無い。知識はインプットしているつもりだけど、背番号と名前と顔が全員一致するかと言われると、まだ予習も足りない。監督さん、コーチの人、それから……
「無理しなくて大丈夫。断ってくるから」
ぐるぐると一人で考え込んでいれば、「もう少し待っててね」と、桜庭さんは私の頭を優しく撫でた。
「(……断る、)」
それも、いいのかな……。
桜庭さんのチームの話、だよね?
私よりもずっと、仲間とコミュニケーションが必要で、それらが顕著に現れるお仕事だと思う。
「あ、い、良いんです!私のことなんて気になさらず!歓迎会、桜庭さんは参加されてください」