蝶よ花よ、あこがれに恋して
桜庭さんは、とてつもなく濃厚で、一瞬も油断出来ない時間をつくりだすひと。
あの瞬間を生み出す彼の力になりたい。
だから、1ヶ月わたしは悩んだ。私の一生を決めるにはとても短い時間だけど一所懸命に。
毎日悩み、正解を探し、桜庭さんの家で答えた。
「私、桜庭さんと一緒にはいけません」
私が出したのは、行かないという答え。
「Vさんの元でスポーツ栄養の基礎知識を学んで、桜庭さんを追いかけます!」
より専門的な知識が必要な仕事だ。私の責任は重大で、だからこそ生半可な気持ちでは支えられないと判断した。
私の決断を、桜庭さんは瞬きもせず「そっか」と、受け入れた。
「しばらくは、遠距離ですが…」
そう、決めたのは私なのだ。誰かに言われて決めたのではない。私が、一緒に行かないと、決めた。
なのに涙がぽろぽろとこぼれて、泣くなといくら命令しても、涙腺が壊れたのか全く止まりそうにない。
「……私のこと、忘れないでくださいー……」
泣きじゃくる私を桜庭さんは抱きしめ「忘れるわけないよ」と、笑った。
「毎日zoomしよう」
「はい!寝落ち通話、したいです」
「絶対活躍して、心鈴ちゃんの耳にひとつでも多く入るように頑張るわ」
「はい。一番に応援します」
「帰国したら必ず一番に会いに行く」
「はい。……私も会いたいです」
独りよがりな私のわがままを丸ごと受け入れてくれる人。毎日を特別な日に変えてくれる人。そんな彼と並んでも恥ずかしくないように、彼に安心してもらえるように、一番の理解者で居られるために。
未来のために、離れる決断をした。