蝶よ花よ、あこがれに恋して
「先生、ありがとうございました」
料理教室が終わり、生徒さんのお見送りをしていれば、一人の女性が丁寧に挨拶をくれた。今日が三度目の彼女は、控えめだけど良く見ると同性の私が惚れ惚れするほどの美人さんってことに前回気づいた。
実は志邑さんに、『知人に紹介したから、面倒見てあげて』と言われたので、こっそり気にかけていた人だった。
「星埜さん!今日はいかがでしたか?」
「今回もあっという間で、とても楽しい三時間でした」
「ふふ、良かった!星埜さんは仕込みが丁寧ですし、真心を込めて作られていることがよく分かります。きっと、作ってあげたい人がいるんですね」
思わず恋と結びつけては、またやってしまった……!と頭を抱えた。
『心鈴ちゃんは他人の恋バナが好きだね。俺との恋バナはもう興味無いのか〜』
少し前、志邑さんが意地悪な笑みを浮かべていたことを思い出したのだ。反省だ。それも猛烈に。
「…………はい」
けれども、星埜さんは恥ずかしそうに、けれどもしっかりと頷いてくれたので、ここぞとばかりに食いついた。
「好きな人に美味しいものを食べさせてあげたい、その気持ちが一番の調味料で、星埜さんのお料理はそれがとても見受けられました。星埜さんの好きな人は幸せ者ですね」
「ありがとうございます」
「いつか、その人に振舞った時の感想、教えてくださいね〜!」