蝶よ花よ、あこがれに恋して

これは案外大問題じゃない?
今夜聞くべきじゃない?

今夜まで持つ?今から試合だよ?試合後の私は興奮してこのモヤモヤも忘れてるんじゃない?

《志邑さん、私の事、いつ好きになったんですか??》

急ぎ、メールを送る。おそらく彼は試合前のミーティング中なので返事は期待しない。

《どうしたの急に》

しかしまだ時間に余裕があったのか、志邑さんのレスポンスは早かった。彼はいつ何時でも甘やかし上手なので、私が調子に乗るのは容易いことだった。

《気になったんです。教えてください》

私の興味は常に無くならない。彼のことを好きな証で、飽きることなく湧き上がるこの感情を、彼は毎回受け止めてくれる。

《今日の試合に勝ったらね》

さらに、彼は私の興味対象に居続けるどころか、こうやって負けられない試合を増やすので困る。

夕暮れのオレンジが夜の帳に変化した頃、スタジアムは熱狂の坩堝と化していた。緑のピッチはまるで戦場のようだ。彼らは己の誇りを賭けて駆け巡る。観衆の叫び声が雷鳴のように響き合い、心臓の鼓動すら飲み込む世界。

近頃は試合の結果よりも、どうか怪我をしないでと祈る方が強い。

試合終了のホイッスルが鳴り響く。鳴り止まない応援歌と歓声が、彼らの健闘を称えている。

恋に恋して、あこがれていた。

好きになるより、あこがれていたほうが楽だったからだ。

そんな私の背中を押してくれる人。

私は、彼が帰り着く場所でいたい。

戦う彼の、安心出来る場所で居続けるために、両手を広げているの。


「おかえりなさい、志邑さん」

「ただいま、心鈴」



⋆ ˚。⋆ 𝜗𝜚 ꙳


蝶よ花よ、あこがれに恋して【完】
< 137 / 137 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

Toxic・Romance

総文字数/21,339

恋愛(オフィスラブ)47ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
──愛が引力の誤作動って言うのなら、ねえ、私は一体どの星の引力に引き寄せられたって言うの。 月島夕結(つきしまゆうゆ) 23歳 AInew所属  × 片桐馨(かたぎりかおる) 26歳 青藍ホールディングスパブリック・リレーションズ所属 「きみが趣味を続けられる良い方法があるんだけど、聞く?」 私に雑メールを送り続ける大っ嫌いなひとが、私の創作意欲を掻き立てる人って、いったい、どんな罰ゲームですか……!?
レンアイゴッコ(仮)

総文字数/119,877

恋愛(オフィスラブ)234ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
恋愛弱者同士によるラブは、果たして最後の恋愛になるのか? 恋多きウェブディレクター 妃立柑花(25) × 無口でクールな同期 東雲琥珀(27)
ハッピーエンド・オーバー

総文字数/24,419

恋愛(ラブコメ)41ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
𓈒𓂂𓂃◌͙𓈒𓐍‪͙𓂃𓈒 𓂂𓏸𓂃‪͙𓐍𓈒◌͙𓂃𓂂 あの約束がいつしか夢に変化したなんて、 君が知ったら、笑うだろうな。 𓈒𓂂𓂃◌͙𓈒𓐍‪͙𓂃𓈒 𓂂𓏸𓂃‪͙𓐍𓈒◌͙𓂃𓂂 榛名 羊(はるな よう) 30歳。デザイン事務所で働くデザイナー 枢木 晃仁(くるるぎ あきと) 30歳。システム開発会社EMZEQ 代表取締役 幼なじみ二人は、ある約束で繋がっていた。 「俺が何年我慢したと思ってんの」 もう、時効だと思っていたけれど──……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop