蝶よ花よ、あこがれに恋して
玉ねぎを炒める時に「この玉ねぎを、飴色になるまで炒めます」と言えば「飴色?」と聞かれるので「二時間程度です」と答えた。
「は?二時間?」
桜庭さんは「じゃあ途中で俺も変わろうか」と王子様よろしく笑顔で促してくれるではないか。私みたいなオタクは、推しに優しくされると軽率に好きになってしまう恐れがある。それをわかっているのか。全財産貢がせるつもりか。桜庭さんの双眸が見詰める。はい、貢ぎます……!
「大丈夫です。こんなこともあろうかと、昨日のうちに炒めておきました」
と言いたいところだけど、今日の私はとても準備が良かった。
「テレビでよく見るやつ」
「そうです」
いつもより丁寧に、いつも通りのカレーを作り終えた。本番はこれからだ。
私の家宝に座り、手を合わせる桜庭さんを正面から正座で見守る。スプーンが口に運ばれる。鼓動は最高潮。
「え、うま。心鈴ちゃんのレストランに行ったらこれ食えるの?」
え、うま。をリフレインさせながら、質問の答えを探す。
「ご、ごめんなさい……えっと、これは……私の家でしか食べれません」
「まじか、通おうと思ったのに」
桜庭さんは、笑顔で肩を落とした。
「(オーナーに検討してもらおう……!!)」
「あ、いい事思いついた」
「な、なんでしょう」
「心鈴ちゃんの家に通えば良いんじゃない?」