蝶よ花よ、あこがれに恋して




「え、割と普通じゃない?」

芸能界の裏事情ともとれる情報をあっさりと私へ渡す桜庭さんに驚きながらも、私は、一般人なので、それをネットの情報みたいに「(そうなんだ……)」と、どこか他人事のように噛み砕いていた。

「普通かもですけど、ほら、ニュースを騒がせたり」

「ああ、一部は報道されるかもだけど、俺とかは全然」

「(……そうなんだ??)」

桜庭さんのような顔面偏差値エリートな人でも全然ってことは桜庭さんは地下アイドル?ってやつ、なのかな?

……てことは私、地下に埋まる原石を見つけちゃったんじゃないの??

これからだれかに発掘されて、みるみる人気が出て、テレビやCMに引っ張りだこになる桜庭さんをメディア越しに見て『私が育てたんだ……!』って謎に見栄を張る日が来るかもしれない。

「心鈴ちゃんは仕事、何してんの?」

楽しい妄想を弾ませていると、突然、推しから興味を持たれる。

「あ……レストランで働いてます」

「レストラン?」

「はい。いちおう、栄養士なんです」

「栄養士。へえ、頼もしいね」

「おんぶは出来ませんが」

「一旦、おんぶは忘れよっか」

「あ、はい、今すぐ忘れます」

言われた通りにする私を見て、桜庭さんは楽しそうに笑って、犬歯を覗かせた。
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