蝶よ花よ、あこがれに恋して

「なんならお金は払うから俺専属の栄養士になって欲しいくらいだよ」

考えを張り巡らせていると、桜庭さんは夢のような話を持ちかける。本当に夢かと思って頬を抓る。当たり前に痛い。

「そ……そんな大層なものにはなれません!!でも……桜庭さんの為になるのであれば、微力ながら協力します」

「うん。無理してない?」

「無理じゃないです。寧ろ、ご褒美です」

本気の本音を告げると「何それ」と言って、桜庭さんは笑った。

「心鈴ちゃんが見張ってくれたらしないかも」

優劣で見れば明らかに私が下。雲の上でしゃがみ込んだ桜庭さんが私を見下ろしている。そんな当たり前のことを再確認し「なにをですか?」と小首を傾げた。桜庭さんが使った食器は洗い終わったら家宝にしようと思いながら。すると、彼は余力のある笑顔を寄越す。

「おいた」

おいた、というのは、さっきの女性関係のことだろうか。

「……そうなんですか?」

「多分ね」

「(なんで?)」

疑問は確かに浮かぶけれど、聞いちゃいけない気がして口を噤んだ。桜庭さんはカレーを完食してくれた。元々桜庭さんの為に作ったカレーなので、余ったカレーをタッパーに詰めて渡すと「これ、返す時に連絡したい」と言って、流れるように連絡先を交換した。

何時でもいいのに、朝いつも会うのに。

桜庭さん。……やっぱり期待しちゃいますよ?

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