蝶よ花よ、あこがれに恋して

桜庭さんは、ファンサしない?


意志とは裏腹に、他人が勝手に自分という尊厳を丸裸にする、その辛さを私は知っているので、インターネット上で桜庭さんの名前を調べるということはしなかった。

ただ、テレビはいつもより多く音楽番組にチャンネルを合わせてみたり、アイドルが出るバラエティ番組を見てみたり。

桜庭さんと交流が増えたことによって、私の毎日にはアイドル関連の情報が増えた。

けれども一ヶ月経てど、テレビで桜庭さんを見かけたことは残念ながら無い。

いつ、私はこの勝負に勝てるのだろうか。


「おね〜さん、聞こえない。もう一回言ってよ」

「も、申し訳ございません……本日の日替わり定食は、チキンのハーブソテーと、もち麦ご飯、自家製味噌を使った……」

そして今日のランチタイムは憂鬱な始まりだった。
相模さんが休みの日で、そういう日に限って嫌な男性客が来店して、今日は私が揶揄いの対象になってしまった。

「ハハ、顔真っ赤。可愛い〜」

「(……さいあく……)」

一通り相手をするころ、私の精神は疲弊しきってしまい、厨房に下がった時にはぐったりとしていた。

あの二人は自称意識高い系大学生らしく、平日のランチタイムにたまに来る人で、毎回テラス席を指定して、写真を撮っている、職場で有名(悪い意味で)なお客さんだ。

たまに同年代の女の子を連れてくる場合もあるけれど、その時は、かなり落ち着いた雰囲気なのだけど、男二人の時は大体調子に乗っている。

店員に態度がおおきい、私が嫌いなタイプだ。

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