腐女子なのでBLゲームの脇役に転生したのに、なぜか主人公もろとも巻き込んだ逆ハー展開が始まって鬱です!
前世の記憶を頼りに俯瞰の姿勢を隠しつつ冷静を装うあたし。
隣の夕璃は突然ガタイの良い高校生から話しかけられたこの状況に少なからず動揺しているようだった。
しかし、政臣の自己紹介を耳にした途端、夕璃の強張った表情筋が少しだけ緩んだのがわかった。
「聖翔高校……」
「おう。お前ら東金中か?そのタイの色は確か、3年だよな?」
この近所に住んでいるのか、制服を一目見ただけですぐに判断がついたらしい。
かくいう彼の高校――聖翔高校はこの近くの駅から電車で数駅。遠くはないけど、数分で行ける距離でもない。この時間帯に、見知らぬ中学生に悠長に話しかけるほどの余裕があるのか。
(っていうか、人の心配をしている場合じゃないんだった)
「そうですけど、すみません。あたしたち、急がないと学校に間に合わないんです」
そこに来てようやくあたしは彼の言葉に頷いて声を発しかけた夕璃をさりげなく制して、代わりに答える。
(だって、やっぱりあたしの推しカプは夕璃と“彼”なのだし、こんなところで先に別の攻略キャラと夕璃を近づけさせるわけにはいかないの!)
正直脳内はそのことばかりで、遅刻なんて言い訳は建前でしかない。ゲームのストーリー上で一番最初に夕璃が知り合うのはメインヒーローの“彼”だと記憶していたが、何の因果か、若干の改変が起こっているもよう。
(でもその“彼”の名前が、やっぱりパッと出てこない……)
困ったことにこの転生システム、恐らく実際にその人物と接触して初めて情報のインプットが進むらしい。
あんなに大好きなキャラだったはずなのに、顔と名前の一致どころか、顔も名前も出てこないとは不甲斐ない。
(まあ、政臣のおかげで夕璃の進学先の高校に関する情報はゲットできたわ)
実は先ほど人知れず、そのデータが降りてきていた。
彼が高校名を発し、それに夕璃が反応した、その瞬間に。
聖翔高校――
それは、ゲームで夕璃が進学予定の――
“男子校”の名前だった。