腐女子なのでBLゲームの脇役に転生したのに、なぜか主人公もろとも巻き込んだ逆ハー展開が始まって鬱です!
(自分で自分に対して“サラブレッド”はちょっとどうかと思うけど)
あくまでゲームの設定上はって話だし、
誰に言われたわけでもないのに、勝手にそう言い訳をして、あたしは再び隣を歩く夕璃に視線を移した。
(確か夕璃、“理論”がどうとか、言ってたな)
果たして何の話を指しているのか、直接それに関わる場面に遭遇してないからか、それに関する具体的な“認識”が降りてこない。
「あー、まあ……。それよりさ、夕璃と高校は別になっちゃうの、寂しいね」
「えっ!う、うん」
先ほど思い浮かべた会話シーンのセリフから誤魔化すように話題を切り替えたあたしに、夕璃は目を丸くして驚く。
戸惑いつつもどこか嬉しそうにはにかむのもつかの間、思い出したように眉尻と目線を下げて続けた。
「でも菜花ちゃんの進学先の高校は、尊敬する研究者の先輩が通ってるって言ってたし、仕方ないよね……。
僕も学内の記事で見たよ。中学の頃にはすでに神童とも呼ばれてたらしくて、科学の申し子とか天才児とか、すごく話題になってたって」
確かに、ゲーム内の菜花が作中、強く慕っていた先輩キャラがいた気がする。
(名前は確か――)
「それって、天鳳院高校2年の日ノ出香のこと?」
そこで突如あたしたちの会話に割り込んできた見知らぬ声に、あたしと夕璃は揃って顔を見合わせた。
声のした背後を振り返ると、すぐ後ろには身長180cmをゆうに超える長身(細マッチョ系)の青年が立っていて。
(この距離なのに、気付かなかった……。でもこの人――見たことがある!)
初対面のその彼を見た途端、夕璃に感じた稲妻のような感覚とはまた違う衝撃が走り、はっと息を吞んだ。
「えっと……?」
「ああ、ごめんごめん。怪しい者じゃないから!
俺は聖翔2年の阿木津政臣っつーんだけど、香とは同中出身の元クラスメイトでさ。それっぽい話してる中学生がいるなー?って思ってつい声かけちまった」
困惑気味に返す夕璃と無言のあたしをなだめるように「驚かせて悪かったな」そう付け加えたその青年は、カラッとした笑顔を浮かべて片方の手の平で謝罪の意を示す。
そんな彼を見て、あたしは確信した。
彼は――
ナノホリで夕璃が恋愛を進める可能性のある、“攻略対象”の一人で、間違いなかった。