腐女子なのでBLゲームの脇役に転生したのに、なぜか主人公もろとも巻き込んだ逆ハー展開が始まって鬱です!
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「こ、こんにちは、失礼しまーす……」(超小声)
国立医科学研究所――
あたしに刷り込まれた父プロファイルにある情報に従って、いつの間にやら辿り着いていたそこは、まさしくその父の職場である。
手元には、客員研究員という一部の指定区画のみを特別に利用許可された非正規職員用の入館カードが握られている。
主任のパパの研究室に限り、自由な行き来が許されている証だ。
(あたしってパパの功績が大きいとはいえ、中学生にして国立の研究機関の利用を許されている立場だったのね……)
前世の自分からは絶対に起こり得ない待遇に度肝を抜かれつつ、受付横のセキュリティゲートにおずおずとカードを翳す。
その間も何人もの施設関係者たちが同じゲートを出入りしていくけれど、子どものあたしにちらりと視線を移しながらも即座に自身に意識を戻す人、そもそも全く意に介さない人、反応は様々だ。
いずれにせよひとつ言えることは、ここに中学生がうろついているという事実自体にはさして興味がないらしい。
「あら、菜花さん。今日は遅いのですね」
「? あ、どうも……」
ゲートから入場する間際、受付から声をかけてきた施設の女性職員にペコリと頭を下げる。
「佐々宮先生からも、最近は学校の授業以外の時間は常に研究室に閉じこもっているなんて話を伺ってたのだけど」
「え?あ、あはは……」
女性は「一段落ついたってところだったのかしら」そうにこやかに笑って、自身の事務仕事に戻って行く。
(あたしがそうまでして進めてた研究って、本当に一体何なのかしら……)
あたしは外線に応じながらこちらに手を振る彼女に軽く会釈をしてから、奥にあるエレベーターホールへ向かう。
丁度良いタイミングでやって来たそのうちの一基に乗り込み、パパの研究室のあるフロア――4階のボタンを押した。
チン♪
数秒後、控えめな電子音が響きフロアへの到着を告げる。
無機質で重厚なそのドアがゆっくりと開いた、その時だった。
「――っぉわ!」
ドアから一歩足を踏み出したあたしの超至近距離に人影が重なり、それを予想していなかったと思われる青年らしき声が反射的に降ってくる。
「~~っ」
対するあたしも、細身に似合わず引き締まった胸元に鼻を直撃させてしまい、鈍い痛みとともに声にならない声が不意に漏れ出た。
一体何事かと、鼻を押さえながらも頭上に視線を移動させた、その先にいたのは――