優しい雨が降る夜は
温泉へ
翌朝、美月が着替えてリビングに行くと、優吾はソファで眠っていた。

(申し訳なかったな)

結局昨夜はオンラインミーティングが始まってしまい、美月は仕方なく寝室を使わせてもらっていた。

静かにキッチンで朝食の作り始め、最後にドリップコーヒーを淹れていると、優吾が「んっ……」と身じろぎして目を覚ます。

「……いい香り」

ポツリと呟く優吾に、美月はキッチンから声をかけた。

「おはようございます。すみません、起こしてしまいましたか?」
「おはよう。いや、いい目覚めだ」

起き上がると、優吾は腕を上げて伸びをする。

「身体、寝違えたりしてませんか?」
「大丈夫。それに今日と明日はリフレッシュ出来そうだ。いい宿が取れたよ」
「え? それって……」
「夕べ話してた温泉宿。箱根にしたんだ。部屋に露天風呂もついてて、食事も部屋食。雲隠れにはいいだろ?」

そう言って美月にふっと笑いかけると、優吾は立ち上がってダイニングテーブルに歩み寄った。

「おっ、フレンチトースト? うまそう。食べてもいいか?」
「あ、はい! もちろん。今、コーヒーもお持ちしますね」

美月は我に返って、再び手を動かす。

「サラダとヨーグルトとフルーツもどうぞ」
「ありがとう、いただきます」

二人で食べ始めるが、美月はまだ半信半疑だった。

(本当に温泉に行くのかしら?)

だが優吾は食べ終わると、着替えを済ませてから当然のように美月に尋ねた。

「もう荷物まとめた?」
「ま、まだです! すみません、すぐに!」
「準備出来たら行こう」
「はい! かしこまりました」

美月は大急ぎで荷物をまとめた。
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