優しい雨が降る夜は
1時間半のドライブで到着したのは、和モダンな雰囲気の高級な温泉宿だった。

(えっ、私こんな服装なのに)

いつものように、ラフなジーンズとカットソーを着てきた美月は恥ずかしくなる。

だが部屋に案内される途中で見かけた宿泊客は皆、浴衣に羽織姿で、それなら良かったと胸をなで下ろした。

「こちらでございます、どうぞ」
「はい、ありがとうございます」

開かれた扉から部屋に入り、美月は思わず息を呑む。

客室の奥にある大きな窓から、目の前に迫る芦ノ湖と綺麗にそびえ立つ富士山が、パノラマ写真のように目に飛び込んできた。

「すごい、なんて美しいの」

感嘆のため息をもらすと、優吾も隣に並んで頷く。

「ああ、これは絶景だな」
「雨宮さん、見て! ウッドデッキに露天風呂がある! この景色を見ながらお風呂に入れるの?」

興奮のあまり、美月は優吾の袖を引っ張って顔を覗き込んだ。

「ん? ああ、そうだよ」
「よもやこの世に、こんなところがあったなんて……」
「ははっ、大げさだな」

スタッフがお茶を淹れてから、にこやかに説明を始める。

「館内は全て浴衣でご利用いただけます。こちらのお部屋は和洋室となっておりまして、あちらのドアがツインベッドの洋室に繋がっております。奥にはバスルームもございますし、館内の大浴場もご利用いただけますので、露天風呂とあわせてお楽しみくださいませ。お食事はお部屋食と承っております。19時にこちらの和室にご用意させていただいてよろしいでしょうか?」

優吾が「はい、お願いします」と答えると、「それでは、ごゆっくり」とスタッフは退室して行った。
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