優しい雨が降る夜は
「おはようございます。お待たせしました」

旅行の日。
マンションまで迎えに行くと、美月は珍しくワンピース姿でタタッと優吾に駆け寄って来た。

「おはよう。可愛いな、美月」

美月は照れくさそうにワンピースを見下ろす。

クラシカルなシルエットのネイビーのワンピースは、襟と袖口と腰のベルトがオフホワイトで、美月の雰囲気によく合っていた。

「ついうっかり、新しく買ってしまったの。あまりに楽しみで仕方なくて」
「ははは! そんな可愛いうっかりなんてあるのか」

笑いながら美月のバッグを受け取り、助手席のドアを開ける。

「ありがとう」

にこっと笑う美月は可憐で、箱根までの車内もおしゃべりしながら、前回よりも更に楽しいドライブになった。

「やったー、着いた! 私の心のオアシス」
「ははっ。ほら、早く中に入ろう」

優吾はさり気なく美月の手を繋いで歩き出す。

(そう言えば、デートらしいデートはこれが初めてか)

恥ずかしそうに視線を伏せて笑みを浮かべる美月に、優吾も思わず頬を緩めた。

(楽しい旅行になりそうだ。そして必ず美月にイエスの返事をもらう)

気持ちを込めて、美月と繋いだ手にキュッと力を込めた。
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