優しい雨が降る夜は
夜になると、二人はウッドデッキのベンチに並んで座り、名残りを惜しむ。
しとしとと雨が降り続いていた。

「明日には帰るなんて、なんだか寂しいな」
「また何度でも来ればいいよ」
「そうですね」
「それにしても、よく降るな。せっかくの旅行なのに」

優吾がそう言うと、美月はポツリと呟いた。

「いつも大切な時に雨が降るの」
「え?」

美月は優吾を見て優しく微笑む。

「雨が降る度に思い出すの。あなたと出逢った時のことや、雨に打たれた私を心配してくれた時のあなたの温かい眼差し。雨の音は気持ちを落ち着かせてくれて、雨を含んだ空気は傷ついた心を包み込んでくれる。雨には、あなたとの思い出がたくさんあるの」

じっと耳を傾けてから、優吾も頷いた。

「そうだな。俺も雨と一緒に思い出すよ、美月との大切な思い出を」

そしてまた、二人で雨の空を見上げる、

「結婚式も降るかな?」
「ふふっ、うん。雨に祝福されたい」
「そうだな」

美月は改めて優吾を見つめた。

「優吾さん、いつもたくさんの優しさをありがとう」

優吾も美月に微笑み返す。

「こちらこそ。あの雨の日に美月に出逢えて良かった。美月が傘に入れてくれて、そこから俺達は始まったから」
「ふふっ、確かに。雨の神様、ありがとう」
「さり気なく傘に入れてくれた美月に、ありがとう」

二人で見つめ合って笑い合う。

「これから先も、二人でたくさんの思い出を作ろうな」
「はい。あなたとなら、幸せな思い出がたくさん増えます」
「俺もだよ、美月」

優吾はそっと美月を抱き寄せ、優しくキスをする。

祝福するかのように、雨の音がそんな二人を包み込んでいた。
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