ヤノダンゴ探偵のダイレクトプレー集
【09 団子九本目:夏休み(3)、ピザの配達事件】
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・【09 団子九本目:夏休み(3)、ピザの配達事件】
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相変わらずナッツ不足のニュースがエンドレスで流れている。
俺はナッツ好きだけども、そんな言うほどかと思いつつ、朝の準備を終わらせる。
「今日は手紙! ありまぁすぅ!」
一階に降りてきた俺に、嬉しそうにそう言った征喜はイスから立ち上がり、俺に手紙を、賞状を贈呈するように渡してきた。
俺は”じゃあ手紙が無い日もテーブルで麦茶飲んでいるのはなんなんだ”と思いつつ、手紙を読むことにした。
なるほど、と思いながら、手紙の中をよく探ると、案の定クオカードが出てきた。
でも字体は前回とは違う。だからこそ同じだ。この差出人は同一人物だ。それは確定だ。
あとやっぱり征喜ではないと思う。征喜はこんな手の込んだことをしない。ずっと一緒だからそれは分かる。
じゃあ一体……そんなことを考えながら、俺は征喜に手紙の内容を言うことにした。
「今回はピザを配達しない地区のはずなのに、最近ピザが配達されているという話だ。バイクを見かけるそうだ」
征喜は小首を傾げながら、
「じゃあ配達するようになっただけなんじゃないか?」
俺は首を横に振ってから、
「いやそれくらいのこと、この依頼人は調べるだろ。でもそうじゃないってことなんじゃないか?」
征喜は頭上に疑問符を浮かべながら、
「いやその手紙は差出人不明でしょ? 何でこの依頼人は調べるとか分かるの?」
征喜は気付いていないようなので、俺はハッキリ言うことにした。
「この差出人はみんな同じ人だ」
征喜は目を丸くしながら、
「えっ? でも文字の感じ、全部違うじゃん!」
俺はとうとうと述べる。
「別人になりすましているんだ、そもそもこんな事件を見つけてくること、見つけようとしている人にしかできないし、そしてそれを差出人不明で全員出すことなんてありえないだろ」
「確かにそうかもなぁ」
そう言って斜め上を見た征喜。
俺はもう少し続ける。
「で、俺の郵便ポストに入れているということも重要だ。普通征喜の家のポストに入れるだろ? ヤノダンゴ探偵と名乗っているのは征喜なんだから。でも俺のところに入れるということは俺が基本的に事件を解決しているということを知っている人間。つまり俺たちに近しい人間ということだ」
すると征喜は制止のポーズをしながら、
「いや事件を解決しているのはボクだ! ボクと、あとキムチという助手の力だ!」
俺は適当に相槌を打ってから、
「まあそこはいい、いいんだ、個人の見解によるところだから。でも俺と征喜の関係性をしっかり知っている人間であることは確実だ。同じ中学校ということは間違いないだろう」
「すごい推理だ! さすがキムチ!」
そう言って、俺とハイタッチをしてきた。
だからって、
「それ以上のことは分からないんだよなぁ、何で俺になのか、このリサーチ力は何なんだ、とか」
征喜は元気いっぱいにジャンピングガッツポーズをしながら、
「とりあえずそのピザ配達の事件を解決しよう!」
「まあそうだなぁ」
俺と征喜はまた駅に行って、電車に乗り、目的地に着いた。
するとすぐさまピザ配達をしているバイクを見つけたので、征喜が手を振って止めようとしたが、全然止まらなかった。
征喜は肩を落としているが、
「まあ基本は仕事中だからな」
と俺は言ったんだけども、征喜は首をブンブン横に振ってからこう言った。
「いや! ちゃんと愛想良くえずくくらいはしたほうがいい!」
俺は即座に、
「会釈な、えずくはオエオエいうことだから」
征喜は俺のことを指差しながら、
「そうそれ! ピザの配達は花形、つまりヒーローなんだからちゃんとしてほしい!」
俺は呆れるように、
「花形じゃないだろ、そんなワントップの選手みたいに言われても」
そんな会話をしながら歩いていると、またピザ配達をしているバイクが前を通りかかり、征喜がデカい声をあげた。
「おーい! ピザ屋さぁ~ん! どこのピザ~!」
しかしその配達のバイクも一瞬こっちを見るだけで、無視するようにまた前を向いて、無言でいなくなった。
征喜は何だかイライラしながら、
「もうあそこのピザ屋では買わない!」
俺はすかさず、
「いやどこのピザ屋か分かってないだろ」
征喜は不満げに、
「でも愛想が無さ過ぎるよ!」
俺はまあまあと落ち着かせるような声で、
「運転中だから、止まったところで話し掛ければいいさ」
俺と征喜はその辺を歩き出した。
この町というか村は長閑な雰囲気で、田畑が中心で建物はまばら。
商店街のようなモノも皆無でコンビニも無い。
こういう場所って大体ピザの配達区域から出ちゃっているんだよなぁ。
でもこういうところこそピザの配達欲しいだろうな、とは思う。
俺は征喜へ、
「まあ聞き込みでもするか。最近ここにピザ配達している業者の名前が分かれば、そういう業者が新しくできたということになるし」
俺と征喜は近くにあった民家のチャイムを鳴らすと、中から少し気難しそうなおじいさんが出てきた。
そのおじいさんは俺たちを見るなり、こう言った。
「何の用だ、用が無いなら帰ってほしい」
俺はちょっと気後れしてしまったのだが、征喜は元気に、
「ここにピザの配達をしている業者さんって誰ですかっ?」
おじいさんは矢継ぎ早に、
「そんなもんは知らん、ピザなんて頼まんわ」
俺はなんとか勇気を振り絞って、
「チラシとか入りませんでしたか? ピザのチラシです」
と聞くと、そのおじいさんは、
「何のことかサッパリだ! 出て行け! よそもんが!」
と言って怒鳴られてしまったので、俺と征喜は出て行くことにした。
外に出て征喜が、
「何だかイライラしているね……何かあったのかなぁ?」
「そうだなぁ、まあいろんな人がいるし、もう一回聞き込みするか」
すると征喜が「へっ」と口を開けてから、
「えっ? 同じところへ? 頑なに中央突破を狙う?」
俺は即座に、
「そうじゃないわ、別の家だわ。ちゃんとサイドアタックに切り替えるから」
俺と征喜は隣の家までまた歩いた。
家と家の間が広く、まさしく田舎って感じだ。
その道中でまたピザの配達が走っていて、そのピザの配達がさっき見かけたピザの配達の人と同じ人だった。
まとめて運ぶくらい、この辺りの人はピザを頼んでいるんだなぁ、と思いつつ、隣の家のチャイムを鳴らした。
「はいどうぞ」
おばあさんの声が聞こえた。
俺と征喜は玄関の戸を開けると、何だかおばあさんはホッと一息ついてから、喋り出した。
「若い子ねぇ、良かったわぁ」
征喜は快活に、
「ヤング!」
と叫んでから、間髪入れずに、
「ヤングヒーロー賞!」
と言ったので俺は、
「ルヴァンカップの若手に送られる賞じゃなくて。若い子で良かったって何ですか?」
と気になっていることを聞くと、おばあさんはこう言った。
「最近ねぇ、この辺は物騒でねぇ、空き巣なんて話があるのよぉ。だから若い子なら安心かなと思ってぇ」
すると征喜が、
「若手も今は良い勢いですよ!」
と言ったので、俺はすかさず、
「それだと俺たちが若手の空き巣みたいなことになっちゃうから! ところでピザの配達してもらう家ってこの辺り多いんですか?」
おばあさんは斜め上を見ながら、
「そうねぇ、この辺はおじいちゃん・おばあちゃんばかりだから、ピザなんて食べないんじゃないかしらねぇ」
俺は間髪入れずに、
「じゃあピザのチラシとか配られましたか?」
と聞くと、おばあさんはう~んと唸ってから、
「そういうのは無かったと思うけどねぇ」
大体、なんとなく分かってきた。
俺はおばあさんに聞き込みに応じてくださったお礼を言ってから、出て、すぐに征喜へこう言った。
「じゃあこれから俺についてきてほしい」
「何か分かったのか! 教えてくれ!」
俺は征喜の勢いを止めるような手のポーズをしながら、
「まあまあまだ考えている途中だから、黙ってついてきてほしい」
「まあキムチがそう言うならっ」
俺はスマホのグーグルマップを見ながら、目的の場所へ歩いていった。
この町は本当に長閑で、歩いている人も真夏なのであまりいない。
俺と同じように歩く同じくらいの年齢の人が一人いるだけで、後はもう誰も外には出ていない……否、
「またピザの配達だ! お兄さん! お兄さん!」
征喜がピザの配達のバイクに手を振るが、一切無反応といった感じで、征喜はまた肩を落とした。
そう、そうなのだ。
このピザの配達は明らかに愛想が悪過ぎるのだ。
客商売なのに、これは無い。
つまり、客商売ではないのだ。
俺は目的地である交番に辿り着くと、征喜が、
「自首?」
俺はツッコむように、
「俺は勢いのある若手の空き巣じゃないから」
と言いながら交番の中へ入って行くと、警察官が迎えてくれた。
「どうなさいましたか?」
俺は警察官へ堂々とした気持ちで、
「最近この地区、空き巣が多いそうで」
警察官は「はいはい」と頷いてから、
「よく知っていますね、お孫さんか何かですか?」
俺は毅然とした態度で、
「そうじゃないんですけども、ここの地区ってピザの配達しませんよね」
警察官は小首を傾げながら、
「そうなんですか? ワタクシはそういうこと分かりませんが」
交番は駐在所と違って、警察官がこの地区に住んでいるわけじゃない。
だからこういうことにも疎いというわけか。
「ここ、ピザの配達地区外なんですけども、ピザの配達のバイクが多いですよね。あれって空き巣犯の見回りなんじゃないんですか?」
俺がそう言うと、警察官は勿論、征喜も目を丸くした。
それから警察官は俺の話を食い寄るように聞いてくれた。
最後に警察官は、
「ではその話は他言無用で。こちらが捜査しますので」
最後に俺の連絡先を聞いてきたので、それには普通に応じて、交番から出た。
外に出ると、俺の後ろを歩いていた同じくらいの年齢の人が近くに立っていて、交番に道聞きに来た人かなと思った。
俺が長話していたせいで、聞けなくて申し訳無かったな、と思いながら、その地区をあとにした。
征喜は「ボクにもすぐ教えてくれればいいのに」と言っていたが、暴走しそうだったから言わなかったと答えると、征喜は「ふぅ~ん~」と犬のように息を吐いた。
後日、警察官から連絡が入り、実際にあのピザの配達は空き巣犯だったらしく、お礼を言われ、さらにまた赴き、表彰状をもらった。
征喜は大層嬉しそうに表彰状を受け取っていた。
まあ征喜の”愛想が悪いピザ屋”というところもヒントになったので、二人の手柄って感じだな。
・【09 団子九本目:夏休み(3)、ピザの配達事件】
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相変わらずナッツ不足のニュースがエンドレスで流れている。
俺はナッツ好きだけども、そんな言うほどかと思いつつ、朝の準備を終わらせる。
「今日は手紙! ありまぁすぅ!」
一階に降りてきた俺に、嬉しそうにそう言った征喜はイスから立ち上がり、俺に手紙を、賞状を贈呈するように渡してきた。
俺は”じゃあ手紙が無い日もテーブルで麦茶飲んでいるのはなんなんだ”と思いつつ、手紙を読むことにした。
なるほど、と思いながら、手紙の中をよく探ると、案の定クオカードが出てきた。
でも字体は前回とは違う。だからこそ同じだ。この差出人は同一人物だ。それは確定だ。
あとやっぱり征喜ではないと思う。征喜はこんな手の込んだことをしない。ずっと一緒だからそれは分かる。
じゃあ一体……そんなことを考えながら、俺は征喜に手紙の内容を言うことにした。
「今回はピザを配達しない地区のはずなのに、最近ピザが配達されているという話だ。バイクを見かけるそうだ」
征喜は小首を傾げながら、
「じゃあ配達するようになっただけなんじゃないか?」
俺は首を横に振ってから、
「いやそれくらいのこと、この依頼人は調べるだろ。でもそうじゃないってことなんじゃないか?」
征喜は頭上に疑問符を浮かべながら、
「いやその手紙は差出人不明でしょ? 何でこの依頼人は調べるとか分かるの?」
征喜は気付いていないようなので、俺はハッキリ言うことにした。
「この差出人はみんな同じ人だ」
征喜は目を丸くしながら、
「えっ? でも文字の感じ、全部違うじゃん!」
俺はとうとうと述べる。
「別人になりすましているんだ、そもそもこんな事件を見つけてくること、見つけようとしている人にしかできないし、そしてそれを差出人不明で全員出すことなんてありえないだろ」
「確かにそうかもなぁ」
そう言って斜め上を見た征喜。
俺はもう少し続ける。
「で、俺の郵便ポストに入れているということも重要だ。普通征喜の家のポストに入れるだろ? ヤノダンゴ探偵と名乗っているのは征喜なんだから。でも俺のところに入れるということは俺が基本的に事件を解決しているということを知っている人間。つまり俺たちに近しい人間ということだ」
すると征喜は制止のポーズをしながら、
「いや事件を解決しているのはボクだ! ボクと、あとキムチという助手の力だ!」
俺は適当に相槌を打ってから、
「まあそこはいい、いいんだ、個人の見解によるところだから。でも俺と征喜の関係性をしっかり知っている人間であることは確実だ。同じ中学校ということは間違いないだろう」
「すごい推理だ! さすがキムチ!」
そう言って、俺とハイタッチをしてきた。
だからって、
「それ以上のことは分からないんだよなぁ、何で俺になのか、このリサーチ力は何なんだ、とか」
征喜は元気いっぱいにジャンピングガッツポーズをしながら、
「とりあえずそのピザ配達の事件を解決しよう!」
「まあそうだなぁ」
俺と征喜はまた駅に行って、電車に乗り、目的地に着いた。
するとすぐさまピザ配達をしているバイクを見つけたので、征喜が手を振って止めようとしたが、全然止まらなかった。
征喜は肩を落としているが、
「まあ基本は仕事中だからな」
と俺は言ったんだけども、征喜は首をブンブン横に振ってからこう言った。
「いや! ちゃんと愛想良くえずくくらいはしたほうがいい!」
俺は即座に、
「会釈な、えずくはオエオエいうことだから」
征喜は俺のことを指差しながら、
「そうそれ! ピザの配達は花形、つまりヒーローなんだからちゃんとしてほしい!」
俺は呆れるように、
「花形じゃないだろ、そんなワントップの選手みたいに言われても」
そんな会話をしながら歩いていると、またピザ配達をしているバイクが前を通りかかり、征喜がデカい声をあげた。
「おーい! ピザ屋さぁ~ん! どこのピザ~!」
しかしその配達のバイクも一瞬こっちを見るだけで、無視するようにまた前を向いて、無言でいなくなった。
征喜は何だかイライラしながら、
「もうあそこのピザ屋では買わない!」
俺はすかさず、
「いやどこのピザ屋か分かってないだろ」
征喜は不満げに、
「でも愛想が無さ過ぎるよ!」
俺はまあまあと落ち着かせるような声で、
「運転中だから、止まったところで話し掛ければいいさ」
俺と征喜はその辺を歩き出した。
この町というか村は長閑な雰囲気で、田畑が中心で建物はまばら。
商店街のようなモノも皆無でコンビニも無い。
こういう場所って大体ピザの配達区域から出ちゃっているんだよなぁ。
でもこういうところこそピザの配達欲しいだろうな、とは思う。
俺は征喜へ、
「まあ聞き込みでもするか。最近ここにピザ配達している業者の名前が分かれば、そういう業者が新しくできたということになるし」
俺と征喜は近くにあった民家のチャイムを鳴らすと、中から少し気難しそうなおじいさんが出てきた。
そのおじいさんは俺たちを見るなり、こう言った。
「何の用だ、用が無いなら帰ってほしい」
俺はちょっと気後れしてしまったのだが、征喜は元気に、
「ここにピザの配達をしている業者さんって誰ですかっ?」
おじいさんは矢継ぎ早に、
「そんなもんは知らん、ピザなんて頼まんわ」
俺はなんとか勇気を振り絞って、
「チラシとか入りませんでしたか? ピザのチラシです」
と聞くと、そのおじいさんは、
「何のことかサッパリだ! 出て行け! よそもんが!」
と言って怒鳴られてしまったので、俺と征喜は出て行くことにした。
外に出て征喜が、
「何だかイライラしているね……何かあったのかなぁ?」
「そうだなぁ、まあいろんな人がいるし、もう一回聞き込みするか」
すると征喜が「へっ」と口を開けてから、
「えっ? 同じところへ? 頑なに中央突破を狙う?」
俺は即座に、
「そうじゃないわ、別の家だわ。ちゃんとサイドアタックに切り替えるから」
俺と征喜は隣の家までまた歩いた。
家と家の間が広く、まさしく田舎って感じだ。
その道中でまたピザの配達が走っていて、そのピザの配達がさっき見かけたピザの配達の人と同じ人だった。
まとめて運ぶくらい、この辺りの人はピザを頼んでいるんだなぁ、と思いつつ、隣の家のチャイムを鳴らした。
「はいどうぞ」
おばあさんの声が聞こえた。
俺と征喜は玄関の戸を開けると、何だかおばあさんはホッと一息ついてから、喋り出した。
「若い子ねぇ、良かったわぁ」
征喜は快活に、
「ヤング!」
と叫んでから、間髪入れずに、
「ヤングヒーロー賞!」
と言ったので俺は、
「ルヴァンカップの若手に送られる賞じゃなくて。若い子で良かったって何ですか?」
と気になっていることを聞くと、おばあさんはこう言った。
「最近ねぇ、この辺は物騒でねぇ、空き巣なんて話があるのよぉ。だから若い子なら安心かなと思ってぇ」
すると征喜が、
「若手も今は良い勢いですよ!」
と言ったので、俺はすかさず、
「それだと俺たちが若手の空き巣みたいなことになっちゃうから! ところでピザの配達してもらう家ってこの辺り多いんですか?」
おばあさんは斜め上を見ながら、
「そうねぇ、この辺はおじいちゃん・おばあちゃんばかりだから、ピザなんて食べないんじゃないかしらねぇ」
俺は間髪入れずに、
「じゃあピザのチラシとか配られましたか?」
と聞くと、おばあさんはう~んと唸ってから、
「そういうのは無かったと思うけどねぇ」
大体、なんとなく分かってきた。
俺はおばあさんに聞き込みに応じてくださったお礼を言ってから、出て、すぐに征喜へこう言った。
「じゃあこれから俺についてきてほしい」
「何か分かったのか! 教えてくれ!」
俺は征喜の勢いを止めるような手のポーズをしながら、
「まあまあまだ考えている途中だから、黙ってついてきてほしい」
「まあキムチがそう言うならっ」
俺はスマホのグーグルマップを見ながら、目的の場所へ歩いていった。
この町は本当に長閑で、歩いている人も真夏なのであまりいない。
俺と同じように歩く同じくらいの年齢の人が一人いるだけで、後はもう誰も外には出ていない……否、
「またピザの配達だ! お兄さん! お兄さん!」
征喜がピザの配達のバイクに手を振るが、一切無反応といった感じで、征喜はまた肩を落とした。
そう、そうなのだ。
このピザの配達は明らかに愛想が悪過ぎるのだ。
客商売なのに、これは無い。
つまり、客商売ではないのだ。
俺は目的地である交番に辿り着くと、征喜が、
「自首?」
俺はツッコむように、
「俺は勢いのある若手の空き巣じゃないから」
と言いながら交番の中へ入って行くと、警察官が迎えてくれた。
「どうなさいましたか?」
俺は警察官へ堂々とした気持ちで、
「最近この地区、空き巣が多いそうで」
警察官は「はいはい」と頷いてから、
「よく知っていますね、お孫さんか何かですか?」
俺は毅然とした態度で、
「そうじゃないんですけども、ここの地区ってピザの配達しませんよね」
警察官は小首を傾げながら、
「そうなんですか? ワタクシはそういうこと分かりませんが」
交番は駐在所と違って、警察官がこの地区に住んでいるわけじゃない。
だからこういうことにも疎いというわけか。
「ここ、ピザの配達地区外なんですけども、ピザの配達のバイクが多いですよね。あれって空き巣犯の見回りなんじゃないんですか?」
俺がそう言うと、警察官は勿論、征喜も目を丸くした。
それから警察官は俺の話を食い寄るように聞いてくれた。
最後に警察官は、
「ではその話は他言無用で。こちらが捜査しますので」
最後に俺の連絡先を聞いてきたので、それには普通に応じて、交番から出た。
外に出ると、俺の後ろを歩いていた同じくらいの年齢の人が近くに立っていて、交番に道聞きに来た人かなと思った。
俺が長話していたせいで、聞けなくて申し訳無かったな、と思いながら、その地区をあとにした。
征喜は「ボクにもすぐ教えてくれればいいのに」と言っていたが、暴走しそうだったから言わなかったと答えると、征喜は「ふぅ~ん~」と犬のように息を吐いた。
後日、警察官から連絡が入り、実際にあのピザの配達は空き巣犯だったらしく、お礼を言われ、さらにまた赴き、表彰状をもらった。
征喜は大層嬉しそうに表彰状を受け取っていた。
まあ征喜の”愛想が悪いピザ屋”というところもヒントになったので、二人の手柄って感じだな。