好きです、先輩。別れてください
「絡まれすぎだよ、はんちゃん」
「え……?」
今みたいに助けてくれたのは、いつだったっけ───。
懐かしい声が、私の後ろから聞こえる。振り返りたいのに振り返れない。
「なんだよお前。俺らが話してんだけど」
「行こっか、はんちゃん」
「あの、せんぱ」
「は、おい!」
声を投げてくる男の人の声なんてないみたいに、ぐいっと私の腕を引いていく。
どうしても会いたかった、触れたかった、その人が今、目の前にいる。
水着の人混みに合わない、私服に帽子の楓茉先輩。
なんでか、泣きそうになった。
「久しぶりだね、はんちゃん」
「楓茉、先輩……」
私たち以外誰もいない物陰で、先輩と向かい合う。
久しぶりに正面から目を合わせた先輩は、困ったように眉を下げて微笑んでいた。
言いたいことはたくさん、溢れるようにあるのに、言葉がまとまらなくて、声にできない。
「こんなところで会うなんて思ってもなかった」
「…私もです」
「友だちと来たの?……それとも、彼氏?」
彼氏なんているわけないでしょ、先輩。
楓茉先輩のことをまだ想っているのに、他の人と付き合うとかあるわけないんだよ。