記憶の欠片
 書き終えた手紙を封筒に入れて、シールを貼る。

 指先が冷たくなっているのに、心臓の音だけがやけに大きい。

 放課後。

 誰もいない昇降口。

 慧くんの下駄箱の前に立つと、足が一瞬だけ止まった。

 でも、もう振り返らないと決めていた。

 そっと、手紙を入れる。

 扉を閉めた音が、やけに大きく響いた。

 それだけで、全部が終わった気がした。


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