記憶の欠片

守るための選択 慧side

 体育館裏を離れて、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。

 冬の終わりの匂いがした。

 乾いた風が頬を刺す。

 ……言った。

 全部を思い出してほしいって。

 背中を向けたまま、愛梨の気配が遠ざかるのを感じていた。

 振り返ったら、きっと決意が揺らぐから。

 あの場で抱きしめてしまいそうだったから。

 俺は歩きながら、あの日のことを思い返していた。


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