記憶の欠片
雨はまだ降っていた。
傘を差せば帰れたけど、足が動かなかった。
帰ったところで、誰もいない家だ。
静まり返った部屋に入っても、余計に考えてしまうだけだ。
俺は教室に戻った。
鞄からノートとペンを取り出す。
震える手で、紙を切り取る。
何から書けばいいか分からなかった。
でも、止まれなかった。
愛梨へ。
ペン先が紙を滑る。
愛梨に出会ってから、俺の世界は色付いた。
愛梨が笑うと、俺も嬉しくて。
愛梨が泣くと、俺も苦しくて。
守りたい。
幸せにしたい。
それだけは、ずっと本気だった。
もし目を覚ましたら、すぐに伝えようと思っていた言葉を、全部書いた。
俺が、愛梨のことを幸せにする。
最後の一文を書き終えた時、不思議なくらい、胸の奥が静かになった。
便箋を丁寧に折って、封筒に入れる。
しっかりと封をする。
その瞬間、雨音が止んでいることに気づいた。
窓越しに空を見上げると、雲の隙間から月が覗いている。
まるで、夜が息をついたみたいだった。
俺は封筒を胸ポケットに入れる。
愛梨。
絶対、目を覚ませよ。
俺は、逃げない。
今度こそ、ちゃんと伝えるから。
下駄箱を開けた瞬間、違和感があった。
いつもより、少しだけ重い。
靴を取り出そうとして、指先に紙の感触が触れた。
白い封筒。
見覚えのある、少し丸い字。
——愛梨だ。
胸が一瞬で冷える。
震える手で封を切る。
中の便箋を開いた瞬間、嫌な予感が背筋を走った。
私はもう、諦めちゃったのかな。
もう、会うことはないと思う。
一人で大丈夫。
ごめんなさい。
そこまで読んだ瞬間、頭の中が真っ白になった。
「……は?」
声が出たのかどうかも分からない。
諦める?
会わない?
一人で大丈夫?
そんなわけないだろ。
あいつが、どれだけ一人で抱え込んでたか、俺は知ってる。
強がりで、泣き虫で、でも人の前じゃ絶対に弱音を吐かない。
嫌な予感が、どんどん膨らんでいく。
今日の愛梨の様子。
事故の直前の顔。
最近、無理に笑ってたこと。
靴をきちんと履く余裕もなかった。
かかとを踏み潰したまま、俺は走り出していた。
どこに行く。
どこに行くんだ、愛梨。
傘を差せば帰れたけど、足が動かなかった。
帰ったところで、誰もいない家だ。
静まり返った部屋に入っても、余計に考えてしまうだけだ。
俺は教室に戻った。
鞄からノートとペンを取り出す。
震える手で、紙を切り取る。
何から書けばいいか分からなかった。
でも、止まれなかった。
愛梨へ。
ペン先が紙を滑る。
愛梨に出会ってから、俺の世界は色付いた。
愛梨が笑うと、俺も嬉しくて。
愛梨が泣くと、俺も苦しくて。
守りたい。
幸せにしたい。
それだけは、ずっと本気だった。
もし目を覚ましたら、すぐに伝えようと思っていた言葉を、全部書いた。
俺が、愛梨のことを幸せにする。
最後の一文を書き終えた時、不思議なくらい、胸の奥が静かになった。
便箋を丁寧に折って、封筒に入れる。
しっかりと封をする。
その瞬間、雨音が止んでいることに気づいた。
窓越しに空を見上げると、雲の隙間から月が覗いている。
まるで、夜が息をついたみたいだった。
俺は封筒を胸ポケットに入れる。
愛梨。
絶対、目を覚ませよ。
俺は、逃げない。
今度こそ、ちゃんと伝えるから。
下駄箱を開けた瞬間、違和感があった。
いつもより、少しだけ重い。
靴を取り出そうとして、指先に紙の感触が触れた。
白い封筒。
見覚えのある、少し丸い字。
——愛梨だ。
胸が一瞬で冷える。
震える手で封を切る。
中の便箋を開いた瞬間、嫌な予感が背筋を走った。
私はもう、諦めちゃったのかな。
もう、会うことはないと思う。
一人で大丈夫。
ごめんなさい。
そこまで読んだ瞬間、頭の中が真っ白になった。
「……は?」
声が出たのかどうかも分からない。
諦める?
会わない?
一人で大丈夫?
そんなわけないだろ。
あいつが、どれだけ一人で抱え込んでたか、俺は知ってる。
強がりで、泣き虫で、でも人の前じゃ絶対に弱音を吐かない。
嫌な予感が、どんどん膨らんでいく。
今日の愛梨の様子。
事故の直前の顔。
最近、無理に笑ってたこと。
靴をきちんと履く余裕もなかった。
かかとを踏み潰したまま、俺は走り出していた。
どこに行く。
どこに行くんだ、愛梨。