記憶の欠片

 愛梨side


 
 三湊くんに連れられて、辿り着いた公園。

 広い芝生と、真ん中に立つ大きな木。

 それだけの場所なのに、胸の奥がざわざわと落ち着かない。


 「……ここ」


 見覚えが、ある気がする。

 でも、どこで、いつ来たのかは分からない。

 分からないのに、知っているみたいな感覚だけが残っている。

 私は無意識に、芝生を見つめたまま立ち尽くしていた。

 ——思い出して。

 そう、頭のどこかで声がした気がした。

 そのとき。

 ぽつり、と腕に冷たいものが落ちた。

 次の瞬間、ぽつ、ぽつ、と音が増え雨がゆっくりと降り始めた。

 その音を聞いた途端、胸が締めつけられる。

 雨の匂い。

 冷たい空気。

 視界を揺らす、水の粒。

 ——だめ。

 そう思ったのに、雨は容赦なく私の中に入り込んできた。

 視界の端に、雨の中で佇む男の子の姿が浮かぶ。

 知らないはずなのに、どうしてか、胸が苦しい。

 次の瞬間、頭の奥を、鋭い痛みが貫いた。


 「……っ」


 立っていられない。

 世界が傾いて、私はその場に崩れ落ちた。

 ——思い出す。

 強制的に、記憶が引きずり出される。


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