記憶の欠片
 教室から飛び出した瞬間。


「っはははは!!」


 腹を抱えて笑う声が廊下に響いた。

 見ると、三湊くんが壁にもたれて、さっきまでの案内役の格好のまま肩を震わせている。


「茉梨、顔やばいぞ。ホラー向いてなさすぎだろ」


「うるさいっ……!」


 明日香ちゃんは真っ青な顔のまま、額に冷や汗を浮かべて睨み返す。


「ほんとに心臓止まるかと思ったんだから……!」


 そのやり取りを横で聞きながら、私はまだ少しぼうっとしていた。

 すると三湊くんが、ふと私を見る。


「……黒瀬?」


 笑いを収めて、首を傾げる。


「顔、赤いけど。どうした?」


「えっ……?」


 指摘されて、一気に意識が戻る。


「な、なんでもないよ。ちょっと暗くて暑かっただけ」


 自分でも分かるくらい、曖昧な言い訳。

 三湊くんは納得していない顔をしていたけど、それ以上は追及せず「そっか」とだけ言った。

 私は明日香ちゃんの腕を引いて、その場を離れる。

 廊下を進むたび、さっきの暗闇と、肩に残った感覚がふっと胸に浮かびそうになって——私は首を振って、考えるのをやめた。

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