記憶の欠片
 それから私たちは、いろんなクラスの屋台を回った。

 焼きそばの匂い。

 わたあめの甘さ。

 どこかで流れる音楽と、笑い声。

 気づけば空は少しずつ色を変えていて、校舎に差し込む光も、柔らかくなっていた。


「……もうすぐ終わりだね」


 明日香ちゃんが名残惜しそうに言う。


「うん。でも——」


 私は小さく笑う。


「二日目も、楽しもう」


 胸の奥に残るざわめきを抱えたまま、それでも、初夏の文化祭の余韻をもう少しだけ味わっていた。
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