記憶の欠片
おまじない
文化祭、二日目。
昨日よりも人が多くて、教室は朝から熱気に包まれていた。
メイド喫茶の看板も、もう見慣れたものになっている。
「いらっしゃいませ〜」
明日香ちゃんと一緒に声を揃えて、ドアの方を見る。
……その瞬間、心臓が、きゅっと鳴った。
入ってきたのは、月城くんと——三湊くん。
二人並ぶと、空気が違う。
一人は静かで涼しげ、もう一人は気だるげでクールな感じ。
でも、どちらもやたら目立つ。
三湊くん達は笑いながら、空いている席に向かう。
月城くんは店内を一度見回す。
そして、私と目が合って——ほんの一瞬で、視線を逸らした。
……気のせい、だよね。
「こちらへどうぞ〜」
明日香ちゃんが先に声をかける。
二人は並んで席に座って、私はメニューを持って近づいた。
「ご注文、お決まりですか?」
なるべく平静を装ったつもりだったのに、月城くんがこちらを見上げるだけで心臓が忙しくなる。
「明日香、久しぶり」
彼が自然にそう言って、明日香ちゃんが少し笑う。
「久しぶりってほどじゃないでしょ。昨日も廊下ですれ違ったし」
そのやり取りが思ったよりも軽くて、思ったよりも自然で。
……あれ?
二人の間に、妙な距離感の近さを感じてしまって、胸の奥が、もやっとする。
別に、何かあるわけじゃない。
明日香ちゃんは私の友達で、月城くんも、ただの顔見知り程度で。
頭では、ちゃんと分かっているのに。
「愛梨ちゃん?」
明日香ちゃんの声で、はっとする。
「注文、取らないと」
「あ、うん……!」
慌ててペンを走らせる。
三湊くんが、そんな私をちらっと見て、にやっと口角を上げた。
「……なんか、落ち着かないな?」
「別に……」
即答するけど、声が少し上ずった。
明日香ちゃんと楽しそうに話す月城くんの横顔を見て、理由の分からない感情が胸の奥に溜まっていく。
——違う。
これは、嫉妬なんかじゃない。
ただ、少しだけ。
少しだけ、気になってしまっただけ。
そう自分に言い聞かせながら、私はまたメイド喫茶の忙しさの中へ戻っていった。
昨日よりも人が多くて、教室は朝から熱気に包まれていた。
メイド喫茶の看板も、もう見慣れたものになっている。
「いらっしゃいませ〜」
明日香ちゃんと一緒に声を揃えて、ドアの方を見る。
……その瞬間、心臓が、きゅっと鳴った。
入ってきたのは、月城くんと——三湊くん。
二人並ぶと、空気が違う。
一人は静かで涼しげ、もう一人は気だるげでクールな感じ。
でも、どちらもやたら目立つ。
三湊くん達は笑いながら、空いている席に向かう。
月城くんは店内を一度見回す。
そして、私と目が合って——ほんの一瞬で、視線を逸らした。
……気のせい、だよね。
「こちらへどうぞ〜」
明日香ちゃんが先に声をかける。
二人は並んで席に座って、私はメニューを持って近づいた。
「ご注文、お決まりですか?」
なるべく平静を装ったつもりだったのに、月城くんがこちらを見上げるだけで心臓が忙しくなる。
「明日香、久しぶり」
彼が自然にそう言って、明日香ちゃんが少し笑う。
「久しぶりってほどじゃないでしょ。昨日も廊下ですれ違ったし」
そのやり取りが思ったよりも軽くて、思ったよりも自然で。
……あれ?
二人の間に、妙な距離感の近さを感じてしまって、胸の奥が、もやっとする。
別に、何かあるわけじゃない。
明日香ちゃんは私の友達で、月城くんも、ただの顔見知り程度で。
頭では、ちゃんと分かっているのに。
「愛梨ちゃん?」
明日香ちゃんの声で、はっとする。
「注文、取らないと」
「あ、うん……!」
慌ててペンを走らせる。
三湊くんが、そんな私をちらっと見て、にやっと口角を上げた。
「……なんか、落ち着かないな?」
「別に……」
即答するけど、声が少し上ずった。
明日香ちゃんと楽しそうに話す月城くんの横顔を見て、理由の分からない感情が胸の奥に溜まっていく。
——違う。
これは、嫉妬なんかじゃない。
ただ、少しだけ。
少しだけ、気になってしまっただけ。
そう自分に言い聞かせながら、私はまたメイド喫茶の忙しさの中へ戻っていった。