記憶の欠片
 今日の音楽の授業は、自由席。

 私は自然と、明日香ちゃんの隣を選ぶ。

 木製の椅子に腰を下ろすと、少し軋む音がして秋の静けさに溶け込んだ。


「音楽室ってさ、秋が一番似合うと思わない?」


 明日香ちゃんが小声で言って、窓の外を指差す。


「分かる。なんか、音まで柔らかくなる気がする」


 そう答えながら、私はもう一度オレンジ色の景色に目を向けた。

 胸の奥には、まだ温度の残る想い。

でも、こうして並んで座っていると、少しだけ心が落ち着く。

 季節は変わっていく。

 けれど、変わらないものも、確かにあって。

 私は、静かに深呼吸をして、秋色の光に包まれながら、音楽の授業が始まるのを待っていた。


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