記憶の欠片
チャイムの音が、澄んだ余韻を残して音楽室に響いた。
カーン、と高い音が天井に反射して、秋の空気に溶けていく。
「はーい、じゃあ始めますよー」
先生の少し間延びした声とともに、今日の授業が始まった。
「今日のテーマはね、いろんな楽器に触れてみよう、です」
ざわ、と小さなどよめきが起こる。
先生はそう言うと、準備室の扉を開けて、奥から次々と楽器を運び出してきた。
小さなタンバリンやカスタネット。
木の温もりを感じるウッドブロック。
銀色に光るトライアングル。
少し大きめのアコースティックギター。
ケースに入ったままのバイオリン。
そして、存在感のある大きなチェロまで。
床に並べられていくたび、音楽室が一気ににぎやかになる。
「好きなの取っていいよー。音出してみて、触ってみてくださいね。今日は評価しないから」
その言葉に、教室の空気が一気にゆるんだ。
楽器の金属音、木が擦れる音、誰かが弦を弾く、試すような音。
窓の外の紅葉と、室内に溢れる不揃いな音色。
秋の音楽室は、まるで小さな演奏会みたいに、ゆっくりと色づいていった。
先生は再び準備室へ戻り、「まだあるよー」と声をかけながら、奥からさらに楽器を運び出してくる。
ひとつ、またひとつ。
その中に——見慣れない、大きな楽器があった。
ゆるやかな弧を描くフレーム。
幾本も張られた弦が、窓から差し込む秋の光を受けて、静かにきらめく。
ハープ。
その姿が視界に入った、その瞬間だった。
——ズキッ。
今まで感じたことのないほどの激痛が、頭の奥を強く撃ち抜く。
息が止まる。
視界が歪む。
音楽室のざわめきが、一気に遠ざかっていく。
胸が締め付けられ、こめかみの奥で何かが暴れるように疼く。
なに、これ……。
そう思う間もなく、床がぐらりと傾いた。
誰かが私の名前を呼んだ気がした。
でも、その声は雨音みたいに滲んではっきり聞こえない。
光が、色が、音が——すべて、すっと暗転して。
私は、その場で意識を失った。
カーン、と高い音が天井に反射して、秋の空気に溶けていく。
「はーい、じゃあ始めますよー」
先生の少し間延びした声とともに、今日の授業が始まった。
「今日のテーマはね、いろんな楽器に触れてみよう、です」
ざわ、と小さなどよめきが起こる。
先生はそう言うと、準備室の扉を開けて、奥から次々と楽器を運び出してきた。
小さなタンバリンやカスタネット。
木の温もりを感じるウッドブロック。
銀色に光るトライアングル。
少し大きめのアコースティックギター。
ケースに入ったままのバイオリン。
そして、存在感のある大きなチェロまで。
床に並べられていくたび、音楽室が一気ににぎやかになる。
「好きなの取っていいよー。音出してみて、触ってみてくださいね。今日は評価しないから」
その言葉に、教室の空気が一気にゆるんだ。
楽器の金属音、木が擦れる音、誰かが弦を弾く、試すような音。
窓の外の紅葉と、室内に溢れる不揃いな音色。
秋の音楽室は、まるで小さな演奏会みたいに、ゆっくりと色づいていった。
先生は再び準備室へ戻り、「まだあるよー」と声をかけながら、奥からさらに楽器を運び出してくる。
ひとつ、またひとつ。
その中に——見慣れない、大きな楽器があった。
ゆるやかな弧を描くフレーム。
幾本も張られた弦が、窓から差し込む秋の光を受けて、静かにきらめく。
ハープ。
その姿が視界に入った、その瞬間だった。
——ズキッ。
今まで感じたことのないほどの激痛が、頭の奥を強く撃ち抜く。
息が止まる。
視界が歪む。
音楽室のざわめきが、一気に遠ざかっていく。
胸が締め付けられ、こめかみの奥で何かが暴れるように疼く。
なに、これ……。
そう思う間もなく、床がぐらりと傾いた。
誰かが私の名前を呼んだ気がした。
でも、その声は雨音みたいに滲んではっきり聞こえない。
光が、色が、音が——すべて、すっと暗転して。
私は、その場で意識を失った。