記憶の欠片

バトンが繋ぐもの

 「えー明日は体育大会です。皆さん、練習の成果を存分に発揮してください。えー、まず体育大会とはですねぇ、えー、様々な——」


 相変わらず要点に辿り着かない校長先生の話を聞き流しながら、私は窓の外を眺めていた。

 明日は体育大会。

 運動はわりと得意な方で、私にとっては学校行事の中でも特に楽しみなイベントのひとつだ。


「——えー、親睦を深めるという意味がね、えー、ありまして。えーえー、皆さん、でも優勝、取りたいですよね?」


 最後だけやけに力強いその一言に体育館のあちこちで小さな笑いが起きる。

 学年集会が終わり、体育館を出た瞬間、明日香ちゃんが我慢できないと言わんばかりに口を開いた。


「校長先生さ、えーって言い過ぎじゃない?」


「五十回は言ってたね」


 腕を組んで本気で怒っている明日香ちゃんに、思わず笑ってしまう。


「でもさ、この学校、イベントは豪華だよね」


 そう言うと、明日香ちゃんはこくりと頷いた。


「二年生の行事の校外学習、すごくない?」


「確か……皆の計画性とか協調性を鍛えるために、一から旅行プラン立てて、一泊二日の旅行をするんだっけ」


 行き先も全部自分たちで決められる。

 だからこそ、行ける場所も自由。


「二年生になるの、楽しみだね」


「そうだね」


 昇降口へ向かう廊下には、夕方の光が差し込み、明日の準備に浮き立つような空気が漂っていた。


「明日、頑張ろうね!」

「うん…!」


 短いやり取りなのに、不思議と胸が温かくなる。

 ——体育大会。

 胸の奥が、わずかにざわつく。

 理由は分からない。

 でも、確かに感じる。

 なにかが起こりそうな予感が、していた。



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