記憶の欠片
…………時は遡り、冬休み前の放課後話だ。
秋の色はすっかり色褪せて、地面には落ち葉が重なり合っていた。
赤や橙だった葉は、踏まれるたびに乾いた音を立て、季節の移ろいを静かに告げている。
朝の空気は冷たく、息を吐くと白くなる。
制服の上に羽織るカーディガンだけでは、もう心許なかった。
校舎の窓から見える景色も、どこか寂しげで。
でも、その中にいる私は——不思議と、前よりも孤独じゃなかった。
記憶を取り戻してから、世界の見え方が変わった。
胸が苦しくなる理由も、誰かの声に救われる意味も。
そして、慧くんを見るたびに感じる、この静かな高鳴りも。
廊下ですれ違えば、ほんの一瞬、目が合う。
それだけで、心臓が跳ねる。
——冬休みが始まる前に。
——この想いは、どこへ向かうんだろう。
そんなことを考えていると、明日香ちゃんが、何でもないみたいな顔で言い出した。
「ねえ、クリスマスパーティーしない?」
突然の提案に、私は一瞬きょとんとする。
でもすぐに、胸の奥がふわっと浮いた。
「いいね!」
そう答えると、明日香ちゃんは少しだけ口角を上げて、間を置いてから続けた。
「じゃあさ、慧も誘おうよ」
その一言に、心臓が跳ねる。
——やっぱり、そう来るよね。
「……うん」
動揺を悟られないように返事をしたつもりだったけど、明日香ちゃんは私の顔をじっと見て、くすっと笑った。
どうやら、私の想いに、彼女はとっくに気づいているみたいだ。
そりゃ分かるよね。
二人とも、昔からずっと一緒だったもん。
嬉しいことがあれば、真っ先に慧くんの名前が浮かんで。
不安なときも、気づけば彼を探してしまう。
そんな私を、明日香ちゃんが見逃すはずがない。
「相変わらず分かりやすいよ、愛梨ちゃん」
そう言われて、頬が熱くなる。
でも、責めるような声じゃなかった。
むしろ、どこか優しくて、背中を押すみたいな響き。
「楽しいクリスマスにしよう」
「過去じゃなくて、今の私たちで」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
——今の私たち。
失った時間も、すれ違った想いも。
全部抱えたまま、それでも前に進もうとしている、今。
窓の外では、冬の風が落ち葉を舞い上げていた。
もうすぐ、この景色も雪に覆われる。
秋の色はすっかり色褪せて、地面には落ち葉が重なり合っていた。
赤や橙だった葉は、踏まれるたびに乾いた音を立て、季節の移ろいを静かに告げている。
朝の空気は冷たく、息を吐くと白くなる。
制服の上に羽織るカーディガンだけでは、もう心許なかった。
校舎の窓から見える景色も、どこか寂しげで。
でも、その中にいる私は——不思議と、前よりも孤独じゃなかった。
記憶を取り戻してから、世界の見え方が変わった。
胸が苦しくなる理由も、誰かの声に救われる意味も。
そして、慧くんを見るたびに感じる、この静かな高鳴りも。
廊下ですれ違えば、ほんの一瞬、目が合う。
それだけで、心臓が跳ねる。
——冬休みが始まる前に。
——この想いは、どこへ向かうんだろう。
そんなことを考えていると、明日香ちゃんが、何でもないみたいな顔で言い出した。
「ねえ、クリスマスパーティーしない?」
突然の提案に、私は一瞬きょとんとする。
でもすぐに、胸の奥がふわっと浮いた。
「いいね!」
そう答えると、明日香ちゃんは少しだけ口角を上げて、間を置いてから続けた。
「じゃあさ、慧も誘おうよ」
その一言に、心臓が跳ねる。
——やっぱり、そう来るよね。
「……うん」
動揺を悟られないように返事をしたつもりだったけど、明日香ちゃんは私の顔をじっと見て、くすっと笑った。
どうやら、私の想いに、彼女はとっくに気づいているみたいだ。
そりゃ分かるよね。
二人とも、昔からずっと一緒だったもん。
嬉しいことがあれば、真っ先に慧くんの名前が浮かんで。
不安なときも、気づけば彼を探してしまう。
そんな私を、明日香ちゃんが見逃すはずがない。
「相変わらず分かりやすいよ、愛梨ちゃん」
そう言われて、頬が熱くなる。
でも、責めるような声じゃなかった。
むしろ、どこか優しくて、背中を押すみたいな響き。
「楽しいクリスマスにしよう」
「過去じゃなくて、今の私たちで」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
——今の私たち。
失った時間も、すれ違った想いも。
全部抱えたまま、それでも前に進もうとしている、今。
窓の外では、冬の風が落ち葉を舞い上げていた。
もうすぐ、この景色も雪に覆われる。