記憶の欠片
 そのまま私たちは並んでフードコートへ向かった。

 夕方のショッピングモールは人で溢れていて、あちこちから楽しそうな笑い声が聞こえる。

 席に腰を下ろすと、明日香ちゃんは迷いなくスマホを取り出した。


「じゃ、送るね」


 画面を操作する指先が軽やかで、私はその横でそわそわと落ち着かない。

 ——どんな返事が来るんだろう。


《慧、クリスマス、空いてる? 私と愛梨ちゃんでパーティーしようって話してて》


 …送信。

 たったそれだけなのに、時間がやけに長く感じる。

 数秒後、スマホが震えた。


「……きた!」


 明日香ちゃんが画面をこちらに向ける。

 そこには、短くて、でも迷いのない返事。


《行く》


 一瞬、二人で顔を見合わせて——


「やった!」


 声が重なった。

 思わず立ち上がって、小さくガッツポーズ。

 周りの視線に気づいて、慌てて座り直すけど、笑いは止まらない。


「決定だね、クリスマスパーティー」


 明日香ちゃんが嬉しそうに言う。

 胸の奥が、じんわりと温かくなる。

 あの日々から、こんな未来に辿り着けるなんて。

 それからは、場所はどうするか、ケーキは何味にするか、そんな他愛もない話で時間が過ぎていった。

 気づけば、外はもうすっかり暗くなっていた。


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