お抹茶王子にキョーミないですっ!
 内緒話とか、何年ぶりだろう。

 耳を、と思うとそういえばさっきから周りがなんだか静かにうるさいことを思い出した。今も「ひゃあ」とか「はあ?」とかヒソヒソ聞こえる。なるほど、これはマズイね?


「あの、先輩。さっきから誰か、というか、数人に付いてこられてません?」


 抜き打ちで、ぱ、と振り向くと、ささ、と数人が物陰に隠れる。

 でも制服がチラ見えしてますよ……? もちろんわたしたちと同じ制服の女子生徒。


「ああ、親衛隊さんだよ」


 あっさり答えるけど、

「なんですかそれは」

「なにって……そのままの意味だと思うけど」


 言って先輩は物陰に潜む女子生徒たちに「おはよう」と手を振って微笑んだ。

 えっ、何人か倒れたっぽいですけど大丈夫ですか!? 先生呼びます!?


「それより話の続き」


 先輩は楽しそうに言うとわたしの耳の高さまで屈んで口もとにその手を添えた。


 先輩の柔らかな小指の外側がわたしの頬の端に触れ、途端に「あ、懐かしい」と思う。


 お菊ちゃんと遊んでいた頃、よくこうして『内緒話』をしていた。

 部屋には二人きりだったのに、耳もとでこそこそ言い合うのがこそばゆくて、おもしろくて。内容はほとんど記憶にないけど。


 そのことを龍崎先輩に言おうと思ったところだった。


「スズちゃんは僕の初恋なんだ」


 じんわり溶けるような、甘く低い声。あの頃のお菊ちゃんのかわいい声と、ぜんぜんちがって驚いた。


 いや、声音(こわね)に驚いたんじゃない。


 内容に驚いたんだ。

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