桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~
「僕がアリスに会わなければ僕の時計は止まらず、黒ウサギは消えない」
そう呟く白ウサギの音色は真剣で、でもどこか切なさを帯びていた。その言葉だけで、彼の言いたい事が分かった気がする。
「彼に会ったことがあるのは、きっと生まれた時だけでしょう。当然彼との思い出はありません。どんな性格なのか、人づてにしか分からないです。けれど、どんな気持ちなのかは共有してきた気がします。同じ運命を背負った、僕の片割れ」
白ウサギと黒ウサギは双子。例え交わる事はなくても、どこかで通じ合い、白ウサギは黒ウサギを大切に思っている。大切に想い、守ろうと思っている。
だから白ウサギは、私に会いたくなかったんだ。
「僕自身が消えることは、怖くなかったといえば嘘にはなりますが、それよりはるかにこの国に生きる、大切な仲間が消える方が怖かったんです。アリスを遠ざける事で、僕が消える事で大切な人を守れると思いました。でも、気づきました。それはただ、逃げているだけなのだと。アリスからも、そして突き付けられている運命からも。きっと僕は、守るフリをして黒ウサギに全てを任せていたんですよ」
ウサギの言葉を静かに待つ。
「先程僕は、アリスに君の願いは何か、と聞きましたよね?」
『アリス。君の願いは何ですか?』
「うん」
橋の上で白ウサギは確かにそう私に聞いた。それはまるで私を導く呪文のようで、心に響いた言葉。きっと私は一生その言葉を忘れない。忘れることなんて出来ない。
白ウサギは私を見ると、優しく笑う。その優しい笑顔はまるで夢見る子供のようで、紡がれた言葉は私の耳に優しく響いた。
「僕にもどうしても叶えたい願いがあるんです。僕は、黒ウサギに会いたい」
それは、呪いがある限り決して叶わない願い。黒ウサギと一緒に、いつか。そう呟いた白ウサギの言葉に、胸の中がギュッと締め付けられる。
大切に想う人に会えないのは、どれだけ辛い事なんだろう。会いたいのに、会えなくて。彼はきっとずっとずっと辛かったはず。
「だから、決めたんです。呪いを解こうって」
視線を外した白ウサギを見つめる。透き通るようなブルーの瞳には、優しさと決意があった。
「呪い、絶対解こうね」
どうしてかな。私はさっき、チェシャ猫や、皆の為に呪いを解きたいと思った。皆の為に、呪いを解くと決めた。
けど今は、彼の為に、白ウサギの為に。呪いを解きたいと思った。そう、彼の為だけに。
「どうしたんですか?」
「うんん。なんでもないよ!」
心の中で強く決意する。黙ったままの私を心配した白ウサギに顔を覗き込まれ、私は首を振る。
馴れない水の中だから具合でも悪いのかと言われたけど、具合が悪いわけじゃない。ただ、今の気持ちを不思議に感じている。先程の白ウサギを見て、白ウサギの為に呪いを解きたいと思うのは当然の事だと思う。けど、理由はそれだけではない気がする。
私は、白ウサギの事を心のどこかで……
「大切に、想っている」
今ある想いとしては、それが一番あっている気がした。初対面で、交わした言葉も少ないのに、不思議と白ウサギは大切な人だと感じる。
「大切におもっている、ですか」
「え、あっ」
思わず呟いた言葉が白ウサギの耳に届いていたようだ。
「僕も今、一番大切に思っているのはアリス、貴女ですよ」
「えっ」
不意に向けられた優しい笑顔と予想外の言葉に胸が苦しくなる。優しく注がれる視線に、思わず頬が熱くなるのがわかった。
そう呟く白ウサギの音色は真剣で、でもどこか切なさを帯びていた。その言葉だけで、彼の言いたい事が分かった気がする。
「彼に会ったことがあるのは、きっと生まれた時だけでしょう。当然彼との思い出はありません。どんな性格なのか、人づてにしか分からないです。けれど、どんな気持ちなのかは共有してきた気がします。同じ運命を背負った、僕の片割れ」
白ウサギと黒ウサギは双子。例え交わる事はなくても、どこかで通じ合い、白ウサギは黒ウサギを大切に思っている。大切に想い、守ろうと思っている。
だから白ウサギは、私に会いたくなかったんだ。
「僕自身が消えることは、怖くなかったといえば嘘にはなりますが、それよりはるかにこの国に生きる、大切な仲間が消える方が怖かったんです。アリスを遠ざける事で、僕が消える事で大切な人を守れると思いました。でも、気づきました。それはただ、逃げているだけなのだと。アリスからも、そして突き付けられている運命からも。きっと僕は、守るフリをして黒ウサギに全てを任せていたんですよ」
ウサギの言葉を静かに待つ。
「先程僕は、アリスに君の願いは何か、と聞きましたよね?」
『アリス。君の願いは何ですか?』
「うん」
橋の上で白ウサギは確かにそう私に聞いた。それはまるで私を導く呪文のようで、心に響いた言葉。きっと私は一生その言葉を忘れない。忘れることなんて出来ない。
白ウサギは私を見ると、優しく笑う。その優しい笑顔はまるで夢見る子供のようで、紡がれた言葉は私の耳に優しく響いた。
「僕にもどうしても叶えたい願いがあるんです。僕は、黒ウサギに会いたい」
それは、呪いがある限り決して叶わない願い。黒ウサギと一緒に、いつか。そう呟いた白ウサギの言葉に、胸の中がギュッと締め付けられる。
大切に想う人に会えないのは、どれだけ辛い事なんだろう。会いたいのに、会えなくて。彼はきっとずっとずっと辛かったはず。
「だから、決めたんです。呪いを解こうって」
視線を外した白ウサギを見つめる。透き通るようなブルーの瞳には、優しさと決意があった。
「呪い、絶対解こうね」
どうしてかな。私はさっき、チェシャ猫や、皆の為に呪いを解きたいと思った。皆の為に、呪いを解くと決めた。
けど今は、彼の為に、白ウサギの為に。呪いを解きたいと思った。そう、彼の為だけに。
「どうしたんですか?」
「うんん。なんでもないよ!」
心の中で強く決意する。黙ったままの私を心配した白ウサギに顔を覗き込まれ、私は首を振る。
馴れない水の中だから具合でも悪いのかと言われたけど、具合が悪いわけじゃない。ただ、今の気持ちを不思議に感じている。先程の白ウサギを見て、白ウサギの為に呪いを解きたいと思うのは当然の事だと思う。けど、理由はそれだけではない気がする。
私は、白ウサギの事を心のどこかで……
「大切に、想っている」
今ある想いとしては、それが一番あっている気がした。初対面で、交わした言葉も少ないのに、不思議と白ウサギは大切な人だと感じる。
「大切におもっている、ですか」
「え、あっ」
思わず呟いた言葉が白ウサギの耳に届いていたようだ。
「僕も今、一番大切に思っているのはアリス、貴女ですよ」
「えっ」
不意に向けられた優しい笑顔と予想外の言葉に胸が苦しくなる。優しく注がれる視線に、思わず頬が熱くなるのがわかった。