想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜
 そういう私も、凱斗さんとの結婚騒ぎで、だいぶ顔が知れ渡ってしまった。

 自分の知らない人に顔も名前も知られているって、ちょっと怖い。

 凱斗さんはずっとこの環境で過ごしてきたんだなと思うと、結婚を急いだ彼の気持ちも理解できる気がする。


 距離が近づいて、凱斗さんが私に気がついた。ほんの少し、たぶん私意外誰も気づかないくらいの差で表情が緩むのを見て、なんだか嬉しくなる。
 
お疲れさまって言いたいな。

「凱斗さ――」
「青柳さん、ちょっとお話が!」

 すれ違いざまに声をかけようとしたら、それまで後ろを歩いていたCAが、突然凱斗さんに駆け寄った。

 私は声をかけそびれ、そのまますれ違う。

 そっと振り返ると、そのCAは何事かを一生懸命凱斗さんに話しかけていた。
 
……あ、凱斗さん、またモテてる。
 
 結婚前から見慣れた光景のはずなのに、なぜだか胸の中がもやっとする。

「彼女、あなたと青柳さんのこと知らないのかしら」

 香川チーフが前髪の間から覗く柳眉をわずかに寄せる。チーフから見ても、彼女の行動は異様だったのだろう。

 凱斗さんが指輪をしていることにも、気づいてないの?

「一言言って来ようかしら」


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