想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜
 仕事を終えて帰宅すると、珍しくリビングに凱斗さんの気配を感じた。

 なんとなく顔を見たくないような気がして、玄関でもたついてしまう。

「蒼羽、帰ったのか?」

 なかなか入ってこない私を不思議に思ったのだろう。愛用している上下揃いのスウェットに着替えて、すっかりリラックスした表情の凱斗さんが顔を出した。

「おかえり」
「ただいま……」
「遅かったな、食事は?」
「まだです」

 彼について、リビングへと入る。部屋の中にふわりといい香りが漂っていた。

「ポトフ作ってるんだけど、一緒に食べないか」
「凱斗さん、食事まだなんですか?」

 壁の時計は、すでに午後十時を指している。

「待っててくださったんですか?」
「ごはん一緒に食べるんだろ?」

 凱斗さんがいたずらっぽい笑みを浮かべる。

「はい!」

 私は、大きく頷いた。

 凱斗さんお手製のポトフは、お野菜がごろっと大きくて、でもしっかり味が染みていて、疲れた体にじんわりとしみ込んだ。

「どう? 初めて作ってみたんだけど」

< 109 / 173 >

この作品をシェア

pagetop