想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜
 地方から出てくるのも大学に進学するのも、両親におんぶに抱っこで、私は自分でどうにかしようなんて考えたこともなかった。

「ご苦労されてるんですね。尊敬します」

「今思えば、いい経験だったよ。大学の外に交友関係も広がったし、視野も広くなった。それに、父以外の家族は俺の夢を応援してくれていた。孤独ではなかったから」

 穏やかな笑みを見せる凱斗さんを見て、少しホッとする。

 自分の人生に味方がいるのといないのとでは、全然違うから。


「さあ着いた。心の準備はいい?」
「は、はい」

 全然よくはないけれど、今さら怖気づくわけにはいかない。

 でも、凱斗さんのご実家を見てまた目がくらみそうになる。とんでもない大きさだ。

 凱斗さんのご実家は、横浜市の閑静な住宅街にあった。

 かつては外国人居留地だったというこの街は、歴史を感じさせる洋館や公園も多く、緑が多い。異国情緒漂う街並みにマッチした、美しい西洋風の建物が凱斗さんのご実家だった。

 ご兄弟は家を出ていて、現在はご両親だけが暮らしているという。

「凱斗おかえりなさい。あなたが蒼羽さんね、はじめまして」

「三崎蒼羽と申します。はじめまして」

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