敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「ほら。治せ」
「……な、何を……」
「意味が分からないとは言わせねぇ」
冷たい視線が、ユリアを射抜く。
「ユリア様……逃げて……。私のことは……」
血を押さえながら、アリシアが震える声で言った。
「嫌よ……。一緒に帰るわ」
ユリアは、アリシアを強く抱きしめた。
「いいから早くしろ!!」
男は苛立ったように叫び、再び刃を振り下ろす。
今度は、アリシアの背中を大きく切り裂いた。
「やめて!!!!」
アリシアが崩れ落ち、血が地面に広がった。
――まずい……この出血量……。
この男の目的は……私の力……。
「……ごめんね……アリシア……」
ユリアは、震える手をアリシアの背へ伸ばした。
――もう二度と使わないと、決めていたのに……。
それでも……この子を失うくらいなら……
目を閉じ、覚悟を決めて力を解放する。
淡い光が、ユリアの掌から溢れ、傷を包み込んだ。
裂けた背中が、みるみるうちに塞がっていく。
腕の傷も、跡形もなく消え去った。
「……ユリア様……?」
目を覚ましたアリシアが、自分の体を見て息を呑む。
「ほう……噂通り、いや、それ以上だ」
男は、歓喜に歪んだ表情でユリアを見た。
「欠陥のない、完全な治癒……最高だ」
ユリアは、アリシアを救えた安堵と同時に、深い絶望に沈んだ。
――やはり傷痕が、残らなかった。
かつて忌み嫌われた“欠陥”すら、ないのだ。
――この力が知られたら……
また、同じことが繰り返される……
あの頃と同じだ。
価値のある道具として扱われた、あの頃と。
脳裏に、兄の声が蘇る。
「立て。そして着いて来い。逆らえば、その女をまた傷つける」
ユリアは腕を掴まれ、馬に乗せられた。
抵抗する気力は、もう残っていなかった。
「ユリア様!! 行かないで!!」
アリシアの叫び声が、遠ざかっていく。
「ユリア様――――!!」
その声だけが、森に虚しく響き続けた。
「……な、何を……」
「意味が分からないとは言わせねぇ」
冷たい視線が、ユリアを射抜く。
「ユリア様……逃げて……。私のことは……」
血を押さえながら、アリシアが震える声で言った。
「嫌よ……。一緒に帰るわ」
ユリアは、アリシアを強く抱きしめた。
「いいから早くしろ!!」
男は苛立ったように叫び、再び刃を振り下ろす。
今度は、アリシアの背中を大きく切り裂いた。
「やめて!!!!」
アリシアが崩れ落ち、血が地面に広がった。
――まずい……この出血量……。
この男の目的は……私の力……。
「……ごめんね……アリシア……」
ユリアは、震える手をアリシアの背へ伸ばした。
――もう二度と使わないと、決めていたのに……。
それでも……この子を失うくらいなら……
目を閉じ、覚悟を決めて力を解放する。
淡い光が、ユリアの掌から溢れ、傷を包み込んだ。
裂けた背中が、みるみるうちに塞がっていく。
腕の傷も、跡形もなく消え去った。
「……ユリア様……?」
目を覚ましたアリシアが、自分の体を見て息を呑む。
「ほう……噂通り、いや、それ以上だ」
男は、歓喜に歪んだ表情でユリアを見た。
「欠陥のない、完全な治癒……最高だ」
ユリアは、アリシアを救えた安堵と同時に、深い絶望に沈んだ。
――やはり傷痕が、残らなかった。
かつて忌み嫌われた“欠陥”すら、ないのだ。
――この力が知られたら……
また、同じことが繰り返される……
あの頃と同じだ。
価値のある道具として扱われた、あの頃と。
脳裏に、兄の声が蘇る。
「立て。そして着いて来い。逆らえば、その女をまた傷つける」
ユリアは腕を掴まれ、馬に乗せられた。
抵抗する気力は、もう残っていなかった。
「ユリア様!! 行かないで!!」
アリシアの叫び声が、遠ざかっていく。
「ユリア様――――!!」
その声だけが、森に虚しく響き続けた。