敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった

78 約束の行方

 翌日、エルフナルドは食事の席に姿を見せなかった。
 ユリアは心の奥で、昨夜のことを何度も思い返しながらも、口には出せずにいた。
 そしてその晩も、寝室に彼が現れることはなかった。
 王宮に響く静寂が、余計に彼女の胸の不安をかき立てる。

 それから次の日も、また次の日も——
 ユリアは寝室でただ待ち続けるしかなかった。
 時折、廊下を歩く誰かの足音に胸を高鳴らせ、扉に耳をすませてはため息をつく。
 
 エルフナルドは、何も告げず、ただ姿を現さないまま——
 
 顔を合わせなくなって五日目の夜。
 ユリアはそっと部屋を抜け出し、庭園へと向かった。
 ベンチに腰を下ろし、静かに薬草を眺める。

 ――謝罪したくても、エルフナルド様にお会いすることすらできない……。
 もう、約束の一週間が来てしまう……。
 一体どうすればよかったの……?

 薬草を見つめながら、ユリアはただ、答えのない問いを抱え続けていた。

 そのとき――

 夜も更けた庭園に、砂利を踏みしめる音が静かに響いた。
 不意に聞こえた足音に、ユリアははっとして振り返る。

 そこに立っていたのは、フレドリックだった。

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