敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
その直後。
「……っ……?」
フレドリックの身体が、僅かに強張った。
「……おい……?」
声が、かすれる。
次の瞬間、喉を押さえ、ユリアを突き飛ばした。
「ぐ……っ!」
ベッドに倒れ込み、苦しそうに喘ぐ。
「な……にを……した……?」
喉の奥を掻きむしるように指を当て、必死にもがく。
ユリアは床に座り込んだまま、その姿を見下ろしていた。
「……毒です」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
「最初は……喉の痺れ。次に、手足の感覚が鈍くなります。
数十分もすれば、四肢から壊死が始まります。……そして、全身に回って……死にます」
「ふざけ……るな……! 解毒薬を……!」
「ありません」
「なら……治せ……! お前の力で……!」
フレドリックは震える指先を見つめ、恐怖に目を見開いた。
「……もう、指が動かしづらいでしょう?」
ユリアは自分の手を見る。
同じように、かすかに震えていた。
「……私も、同じ毒を飲みました」
フレドリックの目が大きく見開かれる。
「貴方が死ぬのを見届けたら……私も死にます。そうすれば、この力は二度と悪用されない」
「フレドリック様と……先王陛下の思い通りには、させません」
「ふざけるなあああ!!」
痺れた身体を無理やり起こし、ユリアの頬を殴る。
「……っ」
床に倒れ込む衝撃。
「嘘をつくな! 治せ……治せえええ!!」
怒鳴りながら、何度も殴りつけてくる。
「あまり……動かない方がいいと思います」
殴られた頬を押さえながら、ユリアは微かに笑った。
「驚くほど毒が早く回りますから。……もう、その腕にも、かなり来ているはずです」
フレドリックの腕が、途中で止まる。
力が、抜けていく。
フレドリックは、ユリアの揺れ続ける指先を見て、言葉を失った。
ユリアの言っていることが本当だと――
本当に自分を殺そうとしているのだと。
そしてユリア自身も……。
「頼む……! もう抱かない! 子も諦める! だから……!」
床に這い、縋るように手を伸ばすフレドリック。
ユリアは、ただ首を横に振り続けた。
「嫌です……」
「この時を……どれほど待ち望んだか……」
その目に、迷いはなかった。
――この力がある限り、争いは終わらない。
だから、自分が消えるしかない。
何日も、何日も考え抜いた結論だった。
絶望に歪むフレドリックの顔を、ただ静かに見つめていた。
「……っ……?」
フレドリックの身体が、僅かに強張った。
「……おい……?」
声が、かすれる。
次の瞬間、喉を押さえ、ユリアを突き飛ばした。
「ぐ……っ!」
ベッドに倒れ込み、苦しそうに喘ぐ。
「な……にを……した……?」
喉の奥を掻きむしるように指を当て、必死にもがく。
ユリアは床に座り込んだまま、その姿を見下ろしていた。
「……毒です」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
「最初は……喉の痺れ。次に、手足の感覚が鈍くなります。
数十分もすれば、四肢から壊死が始まります。……そして、全身に回って……死にます」
「ふざけ……るな……! 解毒薬を……!」
「ありません」
「なら……治せ……! お前の力で……!」
フレドリックは震える指先を見つめ、恐怖に目を見開いた。
「……もう、指が動かしづらいでしょう?」
ユリアは自分の手を見る。
同じように、かすかに震えていた。
「……私も、同じ毒を飲みました」
フレドリックの目が大きく見開かれる。
「貴方が死ぬのを見届けたら……私も死にます。そうすれば、この力は二度と悪用されない」
「フレドリック様と……先王陛下の思い通りには、させません」
「ふざけるなあああ!!」
痺れた身体を無理やり起こし、ユリアの頬を殴る。
「……っ」
床に倒れ込む衝撃。
「嘘をつくな! 治せ……治せえええ!!」
怒鳴りながら、何度も殴りつけてくる。
「あまり……動かない方がいいと思います」
殴られた頬を押さえながら、ユリアは微かに笑った。
「驚くほど毒が早く回りますから。……もう、その腕にも、かなり来ているはずです」
フレドリックの腕が、途中で止まる。
力が、抜けていく。
フレドリックは、ユリアの揺れ続ける指先を見て、言葉を失った。
ユリアの言っていることが本当だと――
本当に自分を殺そうとしているのだと。
そしてユリア自身も……。
「頼む……! もう抱かない! 子も諦める! だから……!」
床に這い、縋るように手を伸ばすフレドリック。
ユリアは、ただ首を横に振り続けた。
「嫌です……」
「この時を……どれほど待ち望んだか……」
その目に、迷いはなかった。
――この力がある限り、争いは終わらない。
だから、自分が消えるしかない。
何日も、何日も考え抜いた結論だった。
絶望に歪むフレドリックの顔を、ただ静かに見つめていた。