敗戦国の花嫁 ー愛してはいけない人を愛してしまった
「エルフナルド様?」
「ただ……少し、お前の楽しそうに話している顔が……」

 そこで言葉が途切れる。
 エルフナルドは自分でも上手く言葉にできないように、僅かに眉を寄せた。

「クリックにしか見せない顔もあるのかと……そう思っただけだ」
「…‥?」

 ユリアはその言葉に少し首を傾げたが、しばらく考えた後小さく口を開いた。

「確かにクリック様といる時は楽しいです。でも、それはアリシアやセルビアといる時も同じです。もちろん……エルフナルド様といる時も。今はこの王宮で、毎日過ごせることが楽しく、幸せですよ」
「……ああ。お前の表情を見ていればわかる。お前が安心して楽しく過ごせていて、私も嬉しい」

 エルフナルドは少し微笑むと、もう一度口を開いた。

「……だからこそ、すまなかったな。私の態度で、お前に余計なことを気にさせてしまった」

 どこか少し切ない表情をしながら、エルフナルドがそう言った。
 ユリアはゆっくり立ち上がると、エルフナルドの元へと近づいた。

「でも……私……エルフナルド様と一緒にいる時が1番幸せですよ? こんなに胸が高鳴るのもエルフナルド様だけです」

 ユリアはエルフナルドの服の裾を掴み、見上げた。
 その言葉と仕草に、エルフナルドは一瞬目を見開いた。
 二人の視線が絡まり、エルフナルドの手がユリアの頬に触れ、ゆっくりと唇が重なった。
 
「……やっぱり」

 ユリアは小さく呟いた。

「こんなに幸せな気持ちになるのは、エルフナルド様だけですよ……?」
 
 そう言って、ユリアはエルフナルドの胸へ顔を埋めた。

「……お前は、本当に……」

 掠れた声。
 次の瞬間、再び強く引き寄せられる。

「……それ以上はもう何も言うな」
「っ……!」

 今度の口付けは先程とは比べ物にならないほど深かった。
 逃がさないように抱き締められ、何度も唇を奪われる。
 
「……ん……」

 唇が離れると、エルフナルドが口を開いた。
 
「……今みたいな顔は、私の前だけにしてくれ……」
「えっと……?」
「恥ずかしそうな、触れて欲しそうな、そんな顔のことだ……」

 エルフナルドの言葉に、ユリアは顔を真っ赤に染めた。
 そしてそれを隠すように、エルフナルドの胸へ顔を埋めた。
 その仕草さえも、エルフナルドにとっては、自分だけに見せてくれる愛おしい瞬間だった。
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