響け!シャガのクレッシェンド
「あと十五分で時計台からからくりが出ますよ」

リズは観光客に笑顔で言う。観光客がお礼を言い、リズは背を向けて歩き出した。レオンハルトは彼女に近付く。

「リズ!!」

レオンハルトが名前を呼ぶと、当然リズは驚いた表情を見せた。しかしレオンハルトは気にせず、彼女の華奢な手を掴む。

「早く事務所に行こう」

「えっ?レオンハルトさん?」

リズは戸惑っていた。レオンハルトも、心の片隅で戸惑いを感じている。何故、ここまで胸が騒つくのか。不安を感じているのか。答えはどこにもない。

「事務所は安全だ」

「安全?どういうことですか?」

リズの目に不安が宿る。レオンハルトの手に力が入った。刹那、「これはこれは。レオンハルト殿ではありませんか」と声をかけられた。声のした方を見て、レオンハルトは足を止める。

「ファスベンダー卿……」

ジョセフ・ファスベンダーは穏やかな笑みを浮かべ、レオンハルトとリズに目を向けている。穏やかな表情だ。敵意は一ミリも感じられない。しかし、レオンハルトの本能が警告を出している。
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