たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「プルルル、プルルル……」

スマホを、耳にひっつける。
呼び出し音が、一つ、また一つ。

落ち着かない。ソワソワする。
心臓もバクバク動いている。

何度やっても慣れない。
ずっと、かかってくることばかりだったから。

「……もしもし?」 

拓真の声が、聞こえた。
この時間だから、小さめの声だ。

私は、スマホで、耳をぺちゃんこに押し潰す。
そして、ヒソヒソ声で。

「も、もしもし?今、大丈夫?」

声を聞けたって、まだ素直に喜べない。
だから、いつも真っ先に、こう尋ねる。

「ああ。そっちは?もう寝たか?」
「うん。もう、ぐっすり」

(あーー……良かった……タイミング間違えなくて)

やっと、素直に喜べた。
ホッと、息を吐く。

「なんだ?今日も、またスマホの前で、うんうん唸ってたのか?」

早速バレた。

「……えっ?何?見てた?」

真っ暗な部屋の中で、頭をあちこちに振る。
もちろん何も、見えやしない。

「はぁ……」

私は、ぴたりと止まる。

突然、拓真のため息が聞こえてきた。
やれやれ……って、感じの。

「あのな……俺は、お前を言いわけにするほど、同じことを何年もやってきてないんだって」
「……そ、それは、わかってるけど」

そうやって、また、ぐずぐず。
でも、拓真は、今日もはっきり、きっぱり。

「もし、俺が廃れたら、単にそれだけの器だったってことだ。また初心にかえって、精進する」

(す、す、廃れる……?)

私は、眉をひそめた。
考えただけで、狂いそうになる。
頭が、心が、その言葉を受け付けなかった。

だから、もっと大きなため息をついた。

「簡単に言うけどさ、それが、何よりも怖いんだよ。私は」
「そうか?俺は、お前がいれば、怖くないぞ?」

こんな怖い話をしているのに。
拓真は、やけに明るい。

だから、本当に大丈夫なんじゃないかって。根拠のない自信?みたいなものが、じわじわと生まれてくる。

「まあ、これは俺の気持ちとしてだ。お前は、また、別だろうが……」
「べ、別じゃないよ!」

だから、伝えた。

何も聞こえない。
しーんとした、部屋の静けさだけが残る。

「……それは、本当か?」
「うん……」

「本当に、本当に、本当にか?」
「本当だって……」

それはもう、しつこいくらいに、聞き返される。
だから、私も、めげずに返す。

嘘偽りない、本心だから。

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