たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
また、意識が戻ってきた。

チュンチュンと、鳥の囀りが聞こえる。

(ん……朝……?)

すぐ、そう分かった。
目を開けようとした。

でも、久しぶりの明るさはあまりにも眩しくて。ちょっとしか目を開けない。

それから、ゆっくり時間をかけて、私の目はぱっちりと開いた。

和紙照明も、真っ白な壁も。
全部、はっきりと見える。

起きたい。

そう思ったら、すぐ背中が浮いた。
身体が明らかに軽くなった。

額を触った。
昨日みたいに、熱くない。
手より、全然冷たかった。

(良かった……回復したっぽい……)

ふと、いつもの癖で、隣を見た。
いつも敷かれていたはずの布団が今日はない。
湊もいない。

(あー……そっか、拓真の部屋だ………)

「ピピピピ、ピピピピ」

すると、枕元からアラーム音が鳴った。

私は、ぐるっと身体の向きを変えた。
伸ばした手で、スマホをタップした。

音が止まった。

そのまま、スマホを持ち上げて、自分の身体に近づけた。

両膝を立てて、座る。
スマホと向き合う。

着信履歴を確認する。

「えっ……?」

私は、そんな驚きの声を出しながら、何度も、何度も、画面をスクロールした。
だって、送っても、送っても、拓真の名前が続く。

でも、指が止まった。

記憶が、全て戻ってきたから。

私が何を言ったか。
私が何を聞いたか。

私は、慌てて布団を跳ね除けた。
スマホを持ったまま、立ち上がった。
走り出した。

襖を開けた。
取っ手を持ったまま、動けなくなった。

格子戸の向こうに、ナイロン袋が見えたから。

また、ゆっくりと、歩き出した。
土間を降りた。
格子戸を開けた。

ナイロン袋を、拾い上げた。

中を見てみると、ペットボトル飲料が袋いっぱいに、入っていた。

すぐわかった。
拓真だって。

(本当に、来たんだ……)

感謝しなきゃいけないはずなのに。

私には、笑顔一つない。

ただ、その中身を見つめたまま、顔を上げられなくなってしまう。

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