たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
通路に、二人の激しい足音が、ずっとある。

どこに向かってるんだろう。
私は、何もわかっていない。

でも、訳もわからず、走っている。
拓真が、連れて行ってくれるから。

すると、本当に、ドアが一つ見えてきた。

そのドアの前で、拓真は止まった。
私も、止まった。

「ガチャッ」

スチールドアの、ハンドルを下げる。

「ギーー」

ドアが開く。

私の瞳には、ダンボールの山が映る。

入り口のそばまで、パンパンだった。
人が入るスペースなんて、まるでない。

(えっ?ここ?ここに?入るの?)

だから、私は、それらを見ながら、ただただ立ち尽くす。

そのとき。

手をグイッと引っ張られた。
足が、よろめく。

身体が回転する。
背中にダンボールが当たる。

拓真の手が、私から離れた。

もう私のそばに、拓真はいない。
顔も見えない。

拓真は、背中を向けたまま。
ドアを手で押さえているから。

そして、後ろ向きのまま。
部屋に入ってきた。

拓真はドアから手を離す。

「ギーー」

ドアが閉まろうとする。
明かりがなくなっていく。

拓真は、くるりと振り返った。
一瞬だけ、顔が見えた。

「バタン」

ドアが閉まった。

もう明かりは一つもない。
真っ暗闇だ。

何も見えない。

拓真は、ダンボールに右手をドーン。
ダンボールが、ぐらっと動く。

私も、後ろに倒れそうになる。
思わず、拓真の腰に、腕を巻きつけた。

すると、拓真の左手も、私の腰に。
身体を前に起こす。

胸と胸が、ぴったりくっつく。
また、肩にポスっと口が埋まる。

ドアの向こうから、笑い声が聞こえる。
だんだん大きくなる。

静かにしなきゃ。

でも、走ってきたあとだから。

肩が揃って上げ下げする。
ハアハアと、互いの身体に息をかけ合う。

ドクドクと、二人の中から音がする。
二人の胸も、しきりに大きく動く。

全部、おんなじだった。

もう、近いとか遠いとかじゃない。
拓真と一緒にいるって事実が、確かにあった。

笑い声は、ぷつりと消えた。
二人の早い呼吸だけが残る。

でも、私たちはずっと、そのままだった。

呼吸が、音を上げなくなっても。
じーーと、耳の音だけになるくらい、静寂に包まれても。

私たちはずっと、そのままだった。

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