たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
「……えっ?」

私は、パッと顔を上げた。

「これから、キスだけで、こんなになるやつの、相手をしなきゃならないんだからさ」

拓真はもう笑ってない。
ガチの目だ。

ガチの目で、私を見下げる。

私は、目をまんまるにした。
拓真の目を見て、固まった。

すると、拓真の手が、私の肩に力をかける。

私は後ろに倒れる。
枕の上に頭を落とす。

仰向けになっている。

目の前には、拓真の顔がある。

「お前、安心し切ってたろ」

やっぱり、何度見ても、マジの目だ。
だから、私は、オドオドと返す。

「……だ、だって、さっきまで普通に」

でも、もうその目は見れない。
拓真が俯いたから。

私も視線を落とす。

第一ボタン。

「俺はさ。一回、一回、忘れられない記憶にしたい」

第二、第三と。
シャツのボタンが外されていく。

「お前には、一生、俺だけで、満足してもらわなきゃ、ならないんだから」

筋肉の隆起が、だんだん顔を出す。

私は、それを、じっと見ていた。
ただただ、固まっていた。

「ん?違うか?」

でも、拓真が、私を見上げる。
だから、私も、顔を上げる。

目が合う。
ちゃんと、言わなきゃ。

私は、ガバッと身体を起こした。
とっさに、答えた。

「違わないよ。一生、拓真だけ」

拓真は、一瞬、目を大きく見開いた。

でも、すぐに俯いた。
ふふっ、と笑いを漏らした。

拓真は、また顔を上げる。
でも、もう目は合わない。

唇を見ている。

拓真の顔が、近づいてくる。
下唇に、かぶりついてくる。

私の唇も、勝手に動いていた。
目も閉じて。
ただ、感覚だけで。

下唇を食べられる。
じゃあ、上唇を。

上唇を食べられる。
じゃあ、下唇を。

息も音を出さない。

チュッ、チュッと、小さな粘着音だけ。

それに、シャカシャカと。
拓真のシャツの音。

唇が離れる。

だから、目を開く。
拓真と目がぶつかる。

拓真は、笑いを吹き出す。
私の額に、ゴーンとぶつかってくる。

ずっと笑ってる。

「っははは……」
「……ん?何?」
「いや?幸せだなあって……」

満ち足りてるって、顔。

そりゃあ、私も同じ顔になる。
同じ気持ちで、胸がいっぱいになる。

「……うん……私もすっごく幸せ」

そして、また。

拓真が笑いながら。
私の唇を、じっと見つめ始める。

だから、私も、ほんのり赤くなった拓真の唇を、じっと見つめる。

二人の笑い声が消える。

吸い寄せられる。

目を瞑る。

また、下唇を食べられる。
じゃあ、上唇を。

上唇を食べられる。
じゃあ、下唇を。

その繰り返し。

どれだけ続けても、息はハアハア上がらない。
ほんとに波一つない、凪のようなキス。

でも、シャツの音が、ぷつりと止まった。

(……ん?終わった?)

だから、私は、首に腕を回した。

すると、拓真が、身体を倒してくる。

首に捕まったまま。
私も一緒に倒れる。

また、枕の上に頭が落ちる。
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