たい焼きの頭としっぽ〜歳の離れた弟を育てていたら、幼なじみの御曹司俳優までお世話することになりました〜
そして、俯きながら。
拗ねた声で、こう聞いていた。

「……変、って思ってるんでしょ」
「ん?どこが?」

私は、顔を上げた。
必死に説明した。

「ど、どこって、下着の色とかさ、昔はもっと、気遣ってたんだよ?でも、最近はたまたま」
「いや。どう見ても、色気増しただろ。お前」

拓真は、またきっぱり、はっきり。

私の言葉も、止まる。
また、俯く。

もう、恥ずかしくなんてない。
拓真が良いというなら、私にはそれがすべてだから。

ただ、その言葉に照れたから。

だから、もう下着を隠す意味もない。
両手を、布団の上にストンと下ろした。

「ほんとに良かったよ。痕つけといて」

(……痕……はっ!)

でも、私はその言葉に顔を上げた。

拓真の目は、もう首筋を狙ってる。
頭の付け根を抱えられる。

また、あれだ。

やっぱり。
拓真が近づいてくる。

私は、とっさに拓真の口を手で塞いだ。

拓真は止まった。
私を見る。

「んーんー」

なにか、喋ってる。
でも、私はそのまま。

厳しい顔で、釘を指す。

「あれだけは、ほんとやめてよ?隠すの大変なんだから」

拓真は、すぐ抵抗しなくなった。
すぐ、静かになった。

だから、手を外そうとした。

そのとき。

私の手首を、ガシッと掴んだ。

「……っは」

私の手を、くるっと回転させる。

手の甲に、唇を押し付けてくる。
わざと、チュッと、吸い付く音を立てて。

「ちょっと……」

これは、恥ずかしい。
耐えられない。

私は、手を引き抜こうとする。
でも、拓真の指は、手首から離れない。

そしてまた、手の甲をひっくり返す。
私に、見せるように。

「ほら。見てみろ、ついてないだろ?」

本当に何もなかった。
自分の肌の色だけ。

「ほんとだ……え?なんで?」
「なんだ?また、つけられるとでも思ったか?」

私は、もう手のひらを見ない。
拓真の目を見る。

「何?わかってて、やってたの?」

でも、目があったのは、ほんの数秒。

拓真は、はぁ……と、ため息をつきながら、すぐに俯いた。

あぐらを、描いた。

私の手は、拓真の膝の上に、バタンと落ちる。

二つの手で、包まれる。
手のひらを、すりすりと、指の腹で撫でられる。

「あのな……あれは、他の男を寄せ付けないために、ああしただけだって……こっちだって、あれっきりにして欲しいよ。あんな思いするの」

こう、嘆かれる。

私の手のひらを見ながら。
眉を下げて。
眉間に皺を寄せて。

誰かに思われる。
誰かに大事にしてもらう。

やっぱり、いつだって、何度だって嬉しい。

だから、私は今日もそんな拓真を見て、思わず笑いをこぼす。

「はははっ」

拓真は、顔を上げた。
すりすり、手のひらを撫でながら。

「お前な……?本当にわかってるか?」
「ごめんごめん。わかってるわかってる」

そう言いながら、私はまだ笑ってる。

だから、拓真は手を止めた。
こう、言ってきた。

「へぇーー……じゃあ、お詫びに手相でも見てもらおうかな」

私の笑い声は、ぴたりと止まった。

そりゃあ、そうだ。
だって、だって……

「だ、誰から、そんなこと……」
「ん?ぼうから聞いたぞ」

拓真は、さらりと答える。

(み、湊かーいーー!!)

もう、何も言えない。
私は、諦めたように、ハァ……と肩を落とした。

渋々、拓真の手を取った。
渋々、自分の手のひらに乗せた。

渋々、聞いた。

「……で?何を見て欲しいの」
「そりゃあ。結婚運一択だろ」

私は、顔を上げた。
目を思いっきり見開きながら。

拓真と目は合わない。
ジーッと、手のひらを見つめているから。

でも、私がもう一度、手のひらを見ることはない。

残念ながら、未来を見る力は、私にはないから。
あるわけが、ないから。

でも、どんな占いよりも、私たちには二人で決めたことがある。

それだけで、十分だ。
それだけで、私はこう答えられる。

「もう何があっても、離れないてください。だって」

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